『責任について 日本を問う20年の対話』現行の「平和」、どう捉える


社会
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『責任について 日本を問う20年の対話』徐京植、高橋哲哉著 高文研・2376円

 琉球併合から今日に至るまで、多数派の日本人による沖縄人差別はより巧妙に形を変えながら連綿と続いている。1903年に大阪で設営された学術人類館と2016年の大阪府警から派遣された機動隊員による「土人」発言。ネット上では相変わらず事実に基づかないヘイトが飛び交っている。それはひとえに日本人の、特に加害の歴史認識が圧倒的に不足していることに原因があると常々感じていた矢先、徐京植(ソキョンシク)氏と高橋哲哉氏による対談集が出版された。

 本書では戦後日本社会における民主主義の姿と歴史認識のゆがみ、そして現在も衰えることのない植民地主義と天皇制といったテーマを扱う。

 徐・高橋によると日本で平和という概念が空洞化した理由は自己と他者の関係を無視し、敗戦時に昭和天皇の戦争責任を減免しようとしたことに端を発するという。加えて、自分が他者の立場に立って考えた時に、それでも今の自分の判断を受け入れることができるかどうかを考えるという作業を通して自己保身に走りがちな自分の判断を相対化する必要性を説く。そうして近隣諸国との「歴史問題」を精査し侵略行為の反省を行い、信頼回復に努めることが大事だとする。

 本書は対談形式で非常に読みやすいため是非幅広い層に読んでほしい一冊だが、特に日本人の研究者や活動家にお勧めしたい。なぜなら、他者に犠牲を押し付け続けた上で成り立つ現行の「平和」をどう捉えているのか、もし問題があると思うなら公平・公正な状態にするためどのような具体的なプロセスが求められているのかを突き詰めて考え、行動に移すことを強く希求するからである。

 現在、自らの責任として基地を各都道府県に引き取るという活動を行う人たちがいる。沖縄人は知事選で辺野古反対という民意をハッキリと示した。近い将来県民投票も行われる予定だ。今後あなたがた日本人が自身の応答責任に鑑みどのような行動を取るのか、われわれは見ている。

 (仲田幸司えんりけ・大阪大学大学院生)

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 たかはし・てつや 56年福島生まれ。東京大学大学院教授。著書に「記憶のエチカ」「戦後責任論」など。

 ソ・キョンシク 1951年京都生まれ。東京経済大学教授。著書に「植民地主義の暴力」「私の西洋美術巡礼」など。

 

責任について
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