那覇市首里の末吉公園内で発掘された神女・ノロの屋敷「ノロ殿内(どぅんち)」の現地説明会が10日、あった。市内でノロ殿内が発掘されたのが初めてとあって、市民ら約250人が集まった。調査に当たった市文化財課・埋蔵文化財グループの樋口麻子専門員は「屋敷内の配置が鮮明に分かったことは非常に大きな発見だ。ノロの生活をひもとく一助になる」と語り、遺構は歴史的、文化的資料として高い価値があると強調した。
市は末吉公園の整備に伴い2015年から末吉村跡の発掘調査に着手し、18年度は屋敷跡の調査を進めている。敷地面積約500平方メートルの屋敷跡では遙拝所や石畳のほか、馬屋や生活用水をためておく埋めがめ、「フール」と呼ばれる豚小屋を兼ねた便所などが確認された。歯ブラシやきせる、沖縄産磁器など生活用品の遺物も多数出土している。樋口さんによると屋敷自体は沖縄戦で消失したが、子息の意向により戦後同地にコンクリートの神棚が設置され、1970年代まで礼拝が続けられたという。
市は芝生の多目的広場を整備するために、石垣など遺構を撤去し、記録保存する。ただ、地域住民から文化財としての保存を求める声も上がっていることから、今後、所管する市花とみどり課や末吉自治会が調整して対応を決める。
市首里汀良町から参加した名幸ユキさん(81)は、琉球王国時代から続くノロは沖縄固有の貴重な信仰文化だとし、「歴史を刻んだ現物が持つ力は大きい。後世へ歴史をつなぐためにも、文化財として保存してほしい」と訴えた。