「働くの 諦めないで」 那覇の美容院 女性の勤務多様化


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「ワークライフバランスの取れたサロンを目指したい」と語る下地康裕さん=7日、那覇市長田

 那覇市長田と古波蔵に店舗を構えるヘアサロン「Si6」(シーム)のオーナースタイリスト下地康裕さん(31)は、女性の社会進出、子育てを支援しようと“美容師の働き方改革”に取り組んでいる。一人一人のワークライフバランスを尊重することで従業員の離職を防ぎ、活気ある職場環境の実現を目指す。「情熱のある人が安心して働き続けられる環境をつくっていきたい」。下地さんは長時間労働、時間の融通が利かないという美容業界の常識も、時代とともに変えていく必要があると訴える。

 働き方を考えるきっかけとなったのは昨年、事業拡大のため従業員を募集したときだ。就職を希望するがプライベートの時間を充実させたい人、家庭の事情などでフルタイムでは働けない人などが多いことに気付いた。これまでも出産を機に美容師として働き続けることを諦めた女性を目の当たりにしてきた。下地さんは「技術や働きたい意欲があるのに、労働条件で人材が埋もれてしまうのはもったいない」と語る。

常連客との会話を楽しみながらカラーリングする大森みのりさん=7日、那覇市長田

 店には0歳児の母と4児の母である“ママさんスタイリスト”2人を含む5人が在籍する。勤務日や時間を選べるフレックスタイム制や、自分の顧客が来店する時だけ出勤し歩合制で給与を受け取るスタイルなど、働き方はそれぞれ。毎月のシフトは店が円滑に運営できる範囲で、従業員の意向を聞き取りながら組んでいく。

 4人の子どもを育てる大森みのりさん(41)は、家族との時間を持つため勤務時間を午後4時半までと決めている。給与が歩合制のため、勤務時間が短い場合も頑張り次第で上を目指すことができるという。子どもの病気や学校行事の際も融通を利いてもらっているといい「オーナーの配慮で無理なく、楽しく働き続けることができている」と笑顔を見せる。

 下地さんは全国と比べて所得が低く、共働きやひとり親世帯が多い沖縄だからこそ多様な働き方や給与形態が求められていると強調する。人材や資本に限りがある個人経営の店でも工夫次第で働き方は改革できるとし「今後も“働きたい美容師”のニーズに応えられるようなサロンを目指したい」と意気込んだ。

 (当銘千絵)