久場島清皓(せいこう)さん(65)=浦添市=は、孫の手を引いてゆっくりとゴールした。ウイルス性脳脊髄膜炎の影響で両足の筋肉が硬直し、歩けなかった状態を乗り越え、2キロの道のりを一歩一歩踏みしめた。久場島さんは「暑くて大変だった」と語るも、息子の皓太さん(37)と孫の清子(さやこ)ちゃん(4)の3人で一緒に完歩できたことを喜んだ。
2017年10月末。風邪の症状が続き、昼間も、家の外でも異常な眠気に襲われた。「これは普通の風邪ではない」と感じた久場島さんは、自ら救急車を呼んだが、乗り込んだ後の記憶はない。
その後、1カ月間は意識が朦朧(もうろう)とし、見舞客が来ても誰だか判別すらできない状態に。治療で意識と体力は徐々に回復したものの、末梢(まっしょう)神経に影響が出たのか、両足に力が入らなくなった。
元気な頃はNAHAマラソンを3回完走するスポーツマン。「もう俺も終わりかな」。思うように動かない体に悔しさが募っていった。
落ち込む久場島さんをリハビリ専門病院のスタッフや家族が支えた。入院しながら毎日、午前と午後のリハビリで歩く練習に励んだ。
ある時、つま先に力を入れることで、自然と次の足が出ることに気付いた。つえを使わずに一歩踏み出すことができた時は、うれしくて介添えしていたリハビリスタッフと一緒に泣いた。
「歩くことは何ものにも変えがたい」。健康と歩くことの尊さを知った。
6カ月余りの入院を経て4月に退院して以降、今でも週4回のリハビリを続けている。そんな時、ひやみかちなはウォークで2キロコースが新設されることを新聞で知った。「これなら参加できる。“社会復帰”できる」と心が弾んだ。
息子と孫の3世代で出場した今大会。歩けるようになったばかりの清子ちゃんを見詰め、「一緒にこれだけ歩いたのは初めて。いい思い出になった」と笑顔を見せた。