渡嘉敷・座間味イノシシ被害 効果的駆除 難航 イノブタも確認 生態系回復に時間


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 深刻化しているイノシシ被害を食い止めようと、渡嘉敷・座間味の両村がわなを仕掛けるなど、駆除を試みている。渡嘉敷では年間約100頭前後を捕獲、駆除しているが、島内にはまだ数百頭のイノシシが生息していると見られ、村は「効果的な駆除方法が見つからない」と頭を抱える。イノシシの一部は繁殖力がより強いイノブタになっているものもおり、本来の生態系を取り戻すにはかなり時間がかかりそうだ。

住民が設置したわなで捕獲されたイノシシ=2017年6月

◆6年で664頭

 渡嘉敷は2011年ごろから本格的に対策に乗り出した。捕獲用のわなを設置し、農家の要望を受けて田畑進入防止柵も設置している。11~17年度までに664頭を捕獲した。

 座間味島でも同様のわなを仕掛けているが、15年から現在までに3頭しか捕らえられていない。島内の生息数は不明だが、5年ほど前から村役場への相談が増えている。担当者は「イノシシ対策なんてこれまでやったことがない。農家もどう対策したらいいのか分からず困っているようだ」と困惑ぎみだ。

 行政だけに頼らず、独自に被害防止を取り組む住民もいる。渡嘉敷の住民男性(66)は「原野で飼っていた友人のヤギが被害に遭った。同じことにならないよう、最近は家の敷地内にヤギを入れている」と言う。

 両村からの要望を受け、県は本年度から現地調査を始めた。結果はまだまとめられておらず、早くて年末になる見通しだ。渡嘉敷、座間味の両村は今後、追加調査やまとめ作業などに取り組んでいる県の実態調査を踏まえ、連携して策定する駆除計画に沿って、駆除方法や規模を再検討する予定だ。

◆繁殖力強める

 1週間ほど前、渡嘉敷で集落内に仕掛けられたわなにイノシシが掛かった。捕獲されたイノシシを見た小嶺智秀さん(66)によると「掛かったイノシシは、イノブタだった」

 繁殖しているイノシシの一部は、豚と交配してイノブタになり、さらに増えている。宮城邦治沖国大名誉教授(動物生態学)によると、イノシシは一度に4~5頭産むが、イノブタは一度に5~6頭出産するという。周年繁殖し、性成熟するまでおよそ1年半と短い。繁殖力はイノシシの数倍上だ。

 宮城氏は「村だけで解決できる問題ではない。長くかかるだろうが、県の実態調査の結果を踏まえて根気強く取り組まなければならない」と指摘した。

 (嘉数陽)