青い鳥そこかしこ(下) 手作りパンと笑顔 旅人和む宿を経営【80歳ナゴマサー 列島歩き】


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ホステル「cue」を営む堀場貴雄さん(左)とさくらさん夫婦=10月、大分県竹田市

 大分の臼杵から阿蘇の山と超えて熊本へのルートが今回の旅の最大の難所だ。

 国道57号線を主に歩いたが、一部を除いては宿も店もない。コンビニすら出会えない。2年前の地震の爪痕が今も生々しく残る。「美しいルートだ! これからの季節は紅葉が最高だ」と“ドライブ族”が言う。確かに!

 滝廉太郎氏の「荒城の月」で有名な岡城がある大分県竹田市は、川が流れ閑静で歴史を感じ落ち着く。最近では隠れキリシタンの地としても脚光を浴びている。

 そこにも青い鳥がいた。古民家を改造した、たけた駅前ホステル「cue(キュー)」を営む千葉県出身の堀場貴雄さん(38)と福岡県出身のさくらさん(39)夫婦だ。2014年に地域おこし協力隊として移住し、2人は地域に根を下ろしてきた。

 2年前に地域の建築家やデザイナーら200人に上るボランティアとクラウドファンディングでゲストハウスを立ち上げた。ゲストハウスには、パン屋も入り、おいしい焼きたてのパンが食べられるのも大きな魅力。堀場夫婦は「スタッフは家族同様と心掛け、将来、スタッフが独立ができるように育ってもらいたい」と熱く語る。明るい笑顔と笑い声の絶えないゲストハウスに旅人も和む。

スタッフの竹間梨香さん

 東京都出身の竹間梨香さん(25)は、オープン当初からのスタッフとしてcueをサポートしている。夕食どき、3人の絶えない明るい対話と笑い声にゲストも引き込まれ、食卓を囲み消灯時まで国境なき会話が弾む。さくらさんはイギリス、竹間さんはスペイン帰りとあって言葉の壁を越えた国際ゲストハウスだ。

 竹間さんは「私のおばあちゃんがウチナーンチュで、赤嶺姓なんです」と話す親しみ深いウチナー笑顔。12月には堀場家には新たな生命が誕生する。同じく12月に竹間さんは新しい夢に向けここからパナマへ巣立つ。

 笑い声が絶えない青い鳥たちが朝日を受けて、おお空に舞うのだ。翔べ幸福の鳥たち!

 10月23日 大分県竹田市
 (比嘉良治、ニューヨーク通信員)

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 米ニューヨークに在住する芸術家で名護市出身の比嘉良治さんが80歳を迎え、東京都の日本橋から沖縄までの歩き旅をスタートさせました。列島歩きを通して出会う人や風景、出来事をつづります。