〈解説〉辺野古 土砂投入 国、県に返還責任転嫁


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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設で、早ければ2022年度とされる普天間飛行場の返還実現を困難とした岩屋毅防衛相の発言からは、沖縄県に責任を転嫁する形で普天間飛行場の危険性除去を急ぐ必要性を強調し、土砂投入の強行を正当化して悪印象を薄める思惑が透ける。工事を新たな段階に進めることで既成事実化し、県民に対して諦めを誘う効果を狙っているとみられる。

 しかし、県民にとっては「辺野古移設か、普天間固定化か」という二者択一論によって県内での「基地たらい回し」を迫るようにも映る。玉城デニー知事が言うように県民の反発を一層招く可能性は否めない。

 岩屋氏は県による埋め立て承認撤回を挙げて危険性除去が進んでいないと指摘した。政府は、普天間飛行場の「5年以内の運用停止」の実現は難しいとの認識を示す際、県の承認撤回に言及してきた。新基地建設反対を掲げる県に責任をかぶせる点で今回の岩屋氏の発言は同じ論法だ。そこには、政府が二者択一の考え方を全国に定着させたい思惑さえうかがえる。これに対し、県は辺野古移設にこだわることが普天間飛行場の危険性除去を遅らせているとの立場で、運用停止と県外移設を要求している。

 防衛局がこれまでに搬出した土砂は最大でも約4800トンと推計され辺野古側必要量の約0・17%にすぎない。今回着手した区域は全区域で最も小さく、埋め立て完了までには一定の期間を要する。埋め立て作業は、大浦湾側に指摘される軟弱地盤の問題など高いハードルもある。県にとっては今後、行政指導など法廷闘争をにらむ取り組みとともに、全国世論へ向け、政府の二者択一論を突き崩す「沖縄の論法」の発信も課題といえそうだ。 (明真南斗)