辺野古土砂投入 沖縄の苦悩、舞台化 演出家・幸喜さん「人間回復の闘い」


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土砂投入を強行した政府に「沖縄を侮辱している」と憤る幸喜良秀さん=13日、浦添市のてだこホール

 沖縄戦や戦後の沖縄の苦悩を表現する舞台作品を数多く手掛けてきた演出家の幸喜良秀さん(80)=沖縄市=は、名護市の辺野古沿岸に土砂を投入し、新基地建設を強行する政府に対し「県民の声を無視し、差別している。沖縄を侮辱している。許せない」と憤る。

 生まれ育ったのは美里村(現・沖縄市)。7歳の時に体験した沖縄戦で20歳、18歳だった姉2人が戦場に動員され犠牲となった。10代半ばだった兄も敗戦直後、不慮の事故で命を落とした。幸喜さんは兄の死も「戦争の続きだ」と捉えてきた。

 戦後は「銃剣とブルドーザー」で土地を強制接収する米軍に抗議し、コザ高3年の時には伊佐浜の土地闘争の集会で高校生代表として発言したこともある。

 県民が基地建設に反対しても圧倒的な力で基地建設を強行し、米統治下も今も変わらない不条理は、多くの演劇で表現してきた。幸喜さんが演出し、うるま市や浦添市で今月、上演した舞台「タンメーたちの春」でも基地を巡る戦後・沖縄の苦悩を描いた。

 これ以上の過重な基地負担を拒否する県民の思いについて「立ち向かって拒否していくことは非常に人間的な営みだ。政治的なものではなく、人間的な当たり前の要求だと思う」と強調する。「人間回復の闘いは、世界に支持される。沖縄だけの問題でない。(人権が)踏みにじられている国々とは、必ず連帯していけるはずだ」と国際世論に訴えていく必要性を語った。