大相撲沖縄場所 迫力の取組に熱視線 栃ノ心 幕内力士トーナメント制す


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 大相撲沖縄場所2018年冬巡業が15日、宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで始まった。力士が稽古で磨き上げた技を目の当たりにし、会場は大きく沸いた。序二段から幕内まで総勢90人の力士による取組は迫力ある立ち合いで、観客の視線は土俵に集まり、勝敗が決まると大きな歓声が上がった。沖縄場所最終日の16日も午前9時から同会場で行われる。

寄り切りで優勝した栃ノ心(右)=15日、宜野湾市の沖縄コンベンションセンター(喜瀨守昭撮影)

 この日は土俵上で公開稽古などのほか、会場の外では子どもたちが餅つき大会に参加し、力士たちは写真やサインに応え、笑顔の輪が広がった。

 幕下の取組では県出身の千代の勝(九重部屋、中部農林高出)が登場した。名前が呼び上げられると会場は拍手で沸き「千代の勝!」と声援が飛んだ。

 千代の勝とハイタッチした本郷碧さん(7)=与那原町=は右上手投げでの勝利を見て「迫力がすごかった」と驚いた。弟の楓ちゃん(5)は「餅つき大会でぺったんぺったんした。子ども用のまわしも、お菓子ももらった」とうれしそうだった。

 土壌では恒例のしょっきりで力士がコミカルに禁じ手などを紹介し、笑いを誘った。あいさつに立った松川正則宜野湾市長は「4年連続の沖縄場所を楽しんでほしい」と話した。

 目玉の幕内の関取によるトーナメント戦は横綱の白鵬から始まった。白鵬は手いっぱいに盛った塩を土俵に高くまき、会場を盛り上げたが、惜しくも1回戦黒星だった。

 トーナメント決勝は栃ノ心と御嶽海がぶつかった。立ち合いで栃ノ心は左手を浅く取った後、しっかり組み直し、まわしをつかめない御嶽海を寄り切った。栃ノ心は得意の粘り相撲での優勝だった。

◇千代の勝 粘り腰の上手投げ 県勢唯一参加、けが越え再浮上期す

立ち合い後、押っつけで回しを取られないように押す千代の勝=15日、宜野湾市の沖縄コンベンションセンター

 県出身ではただ一人、九重部屋の千代の勝(幕下西41枚目、中部農林高出)が幕下の取組で土俵に上がった。貴健斗と対戦し、右上手投げで勝利。得意の粘り腰で地元ファンを沸かせ、取組後は子どもたちからハイタッチで祝福を受けた。

 今年は終盤に苦しんだ。初場所は三段目で4勝3敗と勝ち越し、3月場所で幕下に昇格した。順調に着実に番付を上げ、自信も付いてきた中、7月の名古屋場所中に左膝の骨を折り2日間休場した。4連勝中と好調だっただけに悔しい思いが強く、1カ月は全く体を動かせなかった。

 9月の秋場所は4勝3敗と勝ち越したものの、11月の九州場所は出だしから5連敗。「けがの影響があったと言ってしまえばそれまで。練習不足です」と潔く振り返る。

 今年は幕下の取組で、力を付けつつあることを実感した。沖縄場所の取組でも、立ち合いでは予想以上の重さではじかれ、理想としていた押し相撲にはならなかったが、左の強烈な押っつけで相手の上体を起こした。その後右のまわしをつかみ、上手投げで勝負を決めた。

 取組を見守った父の勝山機義さん(76)は「あいつはハードな練習でも弱音を吐かずへこたれなかった。けがしないような体づくりをして、楽しんで、頑張れ」とエールを送った。年明けの初場所は「三段目に落ちるだろう」と予測をする千代の勝。けがの回復状態については多くを語らず、「また再スタートする」と浮上に向け、固い決意を示した。(古川峻)