劇団O.Z.E(オゼ)の演劇「白梅学徒隊から託されたもの」(永田健作作・演出)が23日午後2時から、那覇市のひめゆりピースホールで上演される。元白梅学徒隊の中山きくさん(90)と武村豊(とよ)さん(89)の戦争体験を聞いた永田が、「沖縄戦の継承」という難題に向き合い、脚本を書いた。永田は「県内の学校や修学旅行生に向けて上演し続け、沖縄戦を生き抜いた人たちの思いをつなぎたい」と力を込める。
永田は、平和ガイドの育成などを行うNPO法人自然体験学校の若林伸一理事長の紹介で中山さんと武村さんに出会い、2016年の春ごろから1年半をかけて作品を完成させた。子どもたちが作品に触れられるよう小中高校での上演を想定し、上映時間を授業時間内で終わる約分とし、照明や音響、舞台道具を最低限にした。
劇は、県立第二高等女学校(第二高女)の4年生で編成された白梅学徒隊として沖縄戦を生き抜いた女性と友人の戦争体験を軸に描かれる。大事な人を失う悲しさや、人の心が失われていく悲惨な戦場を描きながら、最後は「戦争を語り継ぐ」大切さを観客の胸に刻み込む。
第二高女4年生(当時16歳)だった中山さんと武村さんは1945年、第二十四師団の衛生看護教育隊に入隊し、南部の野戦病院で補助看護婦として傷病兵の看護に当たった。
中山さんは、49歳で教員を退職するまで戦争体験を話したことはなかった。退職後、夫の転勤で広島や長崎を訪れ、被爆者との交流などを通じ「過去を知らないと若い方が私みたいに『お国のために』と間違いを犯すかもしれない」と感じたという。以後、体験をまとめたり、講話をしたりして沖縄戦体験を伝えてきた。
演劇について中山さんは「若い人たちの熱意ある演技を大変力強く思っている。舞台で演じることは、(沖縄戦の実態を)訴える力がある」と話す。
武村さんも55歳に教員を退職するまで戦争体験を語らなかった。白梅同窓会の活動を通して体験を語るようになった。劇を見たとき、当時を思い出して最後まで涙が止まらなかったという。
武村さんは「話も分かりやすく演じている人も真剣だった。若い人の演技に涙を誘われた。戦争を体験した私には非常に伝わる内容だった」と感慨深げに話した。
白梅学徒隊として沖縄戦を生き抜いた女性・和子と、命を落とした友人・梅の戦時中の姿を、中学1年生の大城香音さん(13)と比嘉飛鳥さん(13)が演じる。
大城香音さんは「実際にあった戦争が、時代が進み違う感じで伝わってきているように思う。きくさんたちの思いや親友を失う気持ちを大事にして演じたい」と語った。
比嘉さんは「平和に暮らせていることは当たり前じゃないと思った。戦争を体験した人は、今笑って過ごせているけど、あのときはきっと怖くて苦しくて…」と言葉を詰まらせた。
出演は新垣晋也、金城理恵、呉屋みずき、渡嘉敷直貴、秋山ひとみ。
劇は、26日に大阪で開催される「沖縄修学旅行フェア2018in大阪」でも上演する。劇の売り上げは出演者の渡航費に充てる。チケットは一般1500円、学生1千円。問い合わせはオリジン・コーポレーション☎098(866)6118。【琉球新報電子版】