正月の風物詩、年賀状。沖縄県那覇市の玻座真善元さんは92歳になった今も、毎年欠かさずに200枚余りの年賀状を出している。「手に取った人がうれしいように」と筆ペンで一枚一枚、宛名からメッセージまで丁寧にしたためる。今年も遠くに住む友人や親戚に、思いを乗せた玻座真さんの年賀状が届く予定で、新年の始まりを告げる。
「若い頃から字を書くことが好き」という。年賀状と暑中見舞いは、会社勤めの頃から毎年投函(とうかん)してきた。今年も元同僚、友人、親戚と200人以上に宛てた。「お体には気をつけてお過ごしください」「ご家族の皆さまにもよろしくお伝えください」。宛名書きと裏面のあいさつ文に添えるメッセージは全て手書きだ。「入院したと聞いた人には入院生活について尋ねる。コメントがあった方が受け取った人もうれしいから、送る人のことを思って書いている」
年賀状執筆は11月15日から始まる。販売初日に合わせて必要枚数を購入し、1週間集中して手掛ける。書き損じはほとんどないと言う。美しく真っすぐな筆跡は年齢を感じさせない。息子の尚さん(66)は「字がぶれてきたらもうやめようと言っていますが、まだ字がしっかりしている」と感心する。
住所録もハガキと同じく達筆な字で記録され、整理されている。最近では訃報で郵送することがなくなった宛先も。60代の時に20~30人いた同級生は亡くなっていき、今では2~3人になった。玻座真さんは「前はもっと多かったが少なくなってしまった」とさみしげに語る。
玻座真さんの一番の楽しみは、出した相手からの返事だ。正月にはお礼の電話がひっきりなしに鳴る。尚さんが「送った先の人とのやりとりが続くことがうれしいんだと思う」と話すと、玻座真さんはうなずき「体の調子がいいから好きなことができる。元気なうちは続けたい」と笑顔を見せた。
(田吹遥子)