<解説>
宜野湾市の松川正則市長が住民の直接請求により発議された県民投票の事務を実施しない判断を下した背景には、市議会が投票事務の関連予算を否決したことがある。しかし間接民主制を取る中で、住民の直接請求は、より成熟した民主主義に近づけるために保障された権利だ。議会や首長が市民の意思表示の機会を奪う行為に対し「民主主義の否定」と批判されても仕方がない。
今回の県民投票で実施を求める署名をした宜野湾市民は有効署名数で4813人分に上る。松川市長は市当局と議会が「両輪」との言葉を使ったが、それはそれぞれが市民の代表として対等であることを示すもので、主従関係を意味しない。二元代表制の担い手として市民に選ばれ、独立した首長が議会の意向を優先し、住民の直接的な請求を否定することには無理がある。
また、松川市長は投票結果によっては普天間飛行場の固定化が懸念されることも判断理由に挙げた。しかし、それは辺野古の埋め立ての賛否を問うことに対する反対理由であり、住民の意思表示の権利を奪う理由にはならない。
一方、普天間飛行場を抱える宜野湾市が県民投票を実施しない判断を下したことは、同市と同様に保守系首長を擁している他市町村の判断にも影響を与えそうだ。各市町村の首長には、直接請求という住民に認められた権利とどう向き合うかが問われている。
(長嶺真輝)