島に創作洋食 根付かせ シェフ仲間さん、人気店22年で幕


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常連客にカニのパスタを出すシェフ・仲間康順さん=14日、宮古島市平良下里の「ADish(アディッシュ)」

 【宮古島】宮古島市平良下里の創作イタリアン「ADish(アディッシュ)」が今月16日で閉店し、22年間の営業に幕を下ろした。「やっさん」の愛称で親しまれるシェフの仲間康順さん(56)は「お店を愛してもらい、感謝しかない」とほほ笑む。「次のステージに進むための決断だから、今はわくわくしてるよ」と前を見据えている。

 アディッシュが開店したのは1996年。調理師学校で学び、東京の飲食店で14年間勤めた後、仲間さんの両親がステーキ店を営んでいたことから、その店舗を引き継いで始めた。

 宮古島に戻った時、地元の食材に改めて向き合い、「こんなにおいしかったのか」と感動したという。

 「地元食材を中心に料理してきた」と語る仲間さんの料理は、調味料とチーズを除き、ほとんどが地元食材。

 タコやイカなどの魚介類は、仲間さんが自ら素潜りで取ることも。「自分で漁もするから、海や大地に感謝して、お客さんを感動させる料理を作らなければという思いでやってきた」

 開店当初、島内の飲食店は居酒屋がほとんどで、洋食の店はあまりなかった。「ネットでの通販もほぼなかったから、食材の入手も一苦労だった」と振り返る。自分でハーブを育てるなど、工夫を重ねながら理想の味を求め続けた。

 そんな仲間さんの背中を見て学んだアディッシュ出身の料理人や、宮古の飲食関係者らは「やっさんは宮古の洋食のパイオニア」と口をそろえる。

 以前仲間さんの下で働いていた「割烹 浜」(市平良下里)の饒平名知幸さんは「今、自分がやっているジャンルは違うが、食材の扱い方や料理への姿勢は、料理に関わってきた中で一番勉強になった」と話す。「お店を閉めるのは残念」と惜しみつつも、「また何かしてくれるはず」と期待した。

 「特別に思ってくれるお客さんがいて、他とは違うお店を作ることができたと思う」と語る仲間さん。今後の具体的な動きは「まだ秘密」という。「また違った展開で料理は続けていくよ。まだまだいろんなことに挑戦したいからね」と朗らかに笑った。