9月30日に投開票された沖縄県知事選の選挙期間中、インターネット上で、自動的に情報を発信する「ボット(bot)」と呼ばれる機能が使われ、悪質な中傷を含む情報が機械的に拡散されていたことが分かった。選挙期間中にツイッター(短文投稿サイト)で県知事選に関する情報を発信した約2万5千の登録者(アカウント)から無作為に抽出した1250件を琉球新報社が分析したところ、少なくとも約4・8%がボットだった。ボットのうち約7割は候補者の玉城デニー氏に対する悪質な中傷を含む内容を投稿していた。複数のボットを用いて中傷をほぼ同時に拡散させていた登録者もおり、ツイッター社が登録を凍結したとみられる事例も確認された。手動より、短時間で大量に情報を発信することができるボットが、選挙期間中にフェイク(偽)やヘイト(憎悪)、誹謗(ひぼう)中傷の拡散に悪用されている現状が浮き彫りになった。 (ファクトチェック取材班・池田哲平、安富智希、宮城久緒)
琉球新報社が30日までに、ネット上に書き込まれた事件や災害などの情報をリアルタイムで調査するスペクティ(東京、村上建治郎社長)の協力を得て、無作為に抽出したアカウントを分析し、明らかにした。
調査によると、2万4743の登録者が県知事選挙に関する情報を発信していた。投稿は県知事選告示前日の9月12日から投開票日前日の29日までの18日間で、7万7853件に及んだ。今回の調査は登録者が直接投稿したツイート(つぶやき)に限定して分析した。
分析のために抽出した登録者1250件のうち、ボットと認定された登録者は60件だった。誹謗中傷しているブログやほかの人のツイッターの投稿をそのまま引用したり、再投稿したものが多く見られたが、中にはボット自身が他の投稿の言葉や文を拾って作成したとみられる文章を発信した例も確認できた。
あるボット投稿は玉城氏陣営がネットの虚偽情報を、名誉毀損(きそん)罪で告訴したことを挙げ「余りにもひどすぎる弾圧攻撃」と玉城氏陣営を批判していた。その上で「死んで日本国内から消えてもらいたい」と発信した。
別の投稿は玉城氏を「選挙違反常習犯」と中傷し、「負けるわけにはいかん」などと投稿した。さらに別のボット投稿では「こんなヤツが沖縄県知事になったら沖縄は終了」、「当選したら早く独立宣言してください」などとヘイト表現で発信した。
告示前の9月11日には「基地を造って平和になることは絶対にない」と述べた玉城氏の発言に、タレントがネットの番組で「変な薬飲んでない?」と揶揄(やゆ)した内容が、午前2時すぎと午前6時すぎにそれぞれ約20件ずつ、同時に全て違う発信者で投稿されているのが確認された。
投稿のほとんどはその後、登録が削除されていた。ボットの対策として同時刻に違う登録者名で大量に投稿されるケースを取り締まっているツイッター社が登録を凍結したとみられる。
ボットはインターネット上の有料サービスなどで利用でき、大量情報を自動で発信できるため、2016年の米大統領選などで虚偽の情報を拡散させたとの指摘もある。
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「ファクトチェック取材班」は2019年1月1日から、連載「沖縄フェイクを追う~ネットに潜む闇」を始めます。
<用語>ボット(bot)
インターネット上で一連の作業を自動で行うように設定された「ソフトウェア・ロボット」の略称。SNS(会員制交流サイト)で活動するものを「ソーシャルボット」と呼ぶ。ツイッター上には特定の時間に投稿したり、他の利用者の投稿に返信したりするボットなどがある。ボットと明記してニュース速報や名言などを投稿しているものもある。投稿の拡散なども行っている。
<分析の方法>
沖縄県知事選が告示日前日の9月12日から投開票日前日の同29日までにツイッター(短文投稿サイト)で発信された内容に関し、投稿の頻度や時間帯、発信者が規則的な動きをしているか、など複数の要素を勘案して登録者(アカウント)がボットかどうか判断した。スペクティ社が同社のツールや公開されているほかのツールを複合して使い、分析した。