プロ野球の埼玉西武ライオンズの主砲・山川穂高(27)=中部商高―岩手・富士大出=が昨季は47本塁打を放ち県勢としては初の本塁打王に輝き、県勢初のリーグ最優秀選手(MVP)にも選ばれた。人一倍ウチナーンチュとしてのこだわりを持ち臨み続けた躍進の1年。その一方で「至らない部分の方が多かった。まだまだ満足していない」と向上心は尽きない。2019年は「結果を出し続ける難しさ、昨年の自分を超える難しさ」と向き合いながら、50本塁打の大台を狙う。オフシーズンの今、今季に向けた新たな目標などを聞いた。(聞き手 喜屋武研伍)
◆県民が見下されないため
―本塁打王やMVP賞の獲得など、2018年は躍進の1年だった。
「うまくいった部分を多く取り上げてもらってるが、うまくいってないことの方が多い。打率も2割8分1厘で低いし、打点王も最後の最後で浅村栄斗さんに取られてしまった。絶対に負けちゃいけなかった。去年の成績には何も満足していない」
―どういう思いでプレーした1年だったか。
「侍ジャパンで試合に出た時もそうだが、日の丸を背負うというよりは、沖縄を背負ってるという意識が自分にはある」
―地元へこだわる理由は。
「沖縄の人は優しくて争いごとを望まない。県外で暮らしていると、下に見られていると感じることもあり、何かあると『だから沖縄の人はね』となることも多かった。大学時代はそれで苦労した。本塁打王を取ろうと思ったのも、これまで沖縄の人が取ったことないから。僕が取って、プロ野球界の先頭を走っていたら、沖縄の人は下に見られなくなると思って」
◆結果を出す難しさ超える
―プロ入り5年目の快挙。結果が出るまでに苦労した点はあったか。
「試合に出続けるまでが難しかった。僕みたいに過去の実績が少ない人は、ずっと打席に立てるわけじゃない。打てなかったら翌日は交代。チームとの信頼関係を築くのに時間が掛かった。出続けられるようになってからの1年は、(結果を出すのは)それほど難しくなかった」
―47本のホームランのうち、特に印象に残っている1本は。
「9月のロッテ戦で、九回2死からの逆転3ラン。あのひと振りで試合が決まった。ホームランって、4番ってそうじゃなきゃいけなと、強く思った1本だ」
―オフシーズンはどういう課題と向き合っていくか。
「ホームランを打つ練習とヒットを打つ練習は、サッカーと野球ぐらい、やることが違う。もちろんホームランを打つ練習を優先するが、他の練習にも多く時間を使いたい。山川は天才って言われることもあるが、結局練習をしただけ。人間は練習すれば、できないことはあまりないと思う」
―目指していく理想のスイングは。
「ホームランなら中村剛也さんが理想。どんな球でも同じ軌道で振りきる。僕は中村さんより打率が高くて、ホームランを打つのが理想。変化球に応じてスイングの軌道を調整しながら、ホームランを狙っていきたい」
―来季は県民からの期待がさらに大きくなる。プレッシャーに感じる部分はあるか。
「プロ野球選手として、長くてもあと10年ちょっとしかプレーできない。このプレッシャーを背負いながらやっていく。これからは結果を出し続けていく難しさ、自分の(去年の)数字を超える難しさが出てくる。それでも本塁打王、そして50本を目標にしていく」