フラメンコ通し沖縄表現 異文化融合、本場で舞台 那覇市出身・スペイン在住の大城さつきさん


この記事を書いた人 大森 茂夫
観客を前に、踊りを披露する大城さつきさん(右)と友人の竹内美由紀さん=スペインのグラナダ(大城さん提供)

 沖縄音楽とフラメンコ。一見すると全く異なる二つの文化を融合させた女性がいる。フラメンコに魅せられ、10年以上前からスペイン南部のグラナダで修行を続ける大城さつきさん=那覇市出身=はこのほど、日本とスペインの外交樹立150周年を祝うグラナダの記念イベントで、沖縄の音楽や踊りとフラメンコを組み合わせた舞台を披露した。

 骨肉腫を患い、2011年に大腿(だいたい)四頭筋の半分を切除する大手術を乗り越えた大城さん。本場で挑んだ新しい試みは大盛況となり、「スペインの人に親しみやすいフラメンコと融合させることで、まだ知られていない沖縄や日本を伝えることができた」と手応えをつかんだ。グラナダでは、現地に住む日本人らでつくる非営利団体「カサ・ハポン」(谷川満男代表)が昨年11月の1カ月間さまざまなイベントを開催した。大城さんの舞台もその一環だ。

 「フラメンコ特有の哀愁ただようギターの音色を、三線でやっても合うだろう」。以前から沖縄音楽とフラメンコに共通するものを感じていた。グラナダに住むフラメンコ仲間の竹内美由紀さん=島根県津和野町出身=と舞台の内容を考え、大城さんは沖縄音楽、竹内さんは地元の郷土芸能・石見神楽の要素を取り入れた。会場となったのはフラメンコの愛好家が集う「プラテリア」と呼ばれる伝統的な小劇場。「リズムが違うので思った以上に難しかった」。と言うが、練習を重ね、安里屋ユンタに乗せマントンと呼ばれるショールを使った踊りを披露すると手拍子する観客もいた。

 イベントのオープニングでは沖縄の琉球舞踊団が出演した。三線の音色が聞こえた瞬間、ボランティアスタッフとして参加した大城さんは自然と涙があふれた。

 「フラメンコに少しでも近づきたい」との一心で移り住んで約12年。手術のため沖縄に戻った時期はあったものの、スペイン生活にすっかり溶け込んでいた。しかし、三線の音にあふれた涙で感じたのは「私の根っこはやっぱり沖縄ということ」。「私の心はいつも沖縄にある」と再認識した。

 大城さんによると、グラナダで日本について知っているのはアニメファンなど一部の人に限られる。「フラメンコを通して日本人である私しかできない表現をすることで、地元のスペイン人にも日本や沖縄が身近になってもらえるとうれしい」。19年以降も、沖縄音楽とフラメンコの融合を継続しようと考えている。
(半嶺わかな)