米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票を巡り、投票に参加しない市が出た場合、その市の住民が意思を示す代替手法として、県が任意に設置した投票所に足を運んでもらうことを選択肢の一つとして検討していることが分かった。県が市に代わって事務を直接実施する案もあるが、県民投票条例を改正する必要がある上、投票資格者名簿の作成に必要な選挙人名簿の提供を、投票事務を拒否した市から拒まれる可能性があるため県庁内や県政与党間で困難視されている。
ただ県は全市町村での実施に向け、首長の説得に最後まで全力を挙げる構え。玉城デニー知事は9日、宮古島市に下地敏彦市長を訪ね説得する。
任意で投票所を設置し投票してもらう市の投票結果は、条例に基づく正式な投票結果に反映されない。あくまで参考の扱いとなる。このため市民からは条例を改正し、県が正式に投票事務を実施するよう求める声がある。
しかし県が事務を実施する際には投票資格者名簿を作成する必要があり、市から選挙人名簿を提供してもらわなければならない。県や県政与党間には提供を受けられるか「不透明」との見方が強い。選挙人名簿は個人情報保護の観点などから閲覧できる場合が限定されている。閲覧できたとしても数十万人分の選挙人名簿を手書きで写す必要があり、作業は膨大となる。
また条例を改正する場合、県議会での議決を経て県が事務の準備を進めるのに期間を要するため、投票日の2月24日に間に合わない可能性も高くなる。
これらの理由から県議会与党の間では改正に否定的な意見が多く、「5市がやらない状態でもこのままやるしかない」などの意見が上がっている。
県は県民投票条例に基づき投票資格の作成と投開票など事務の実施は市町村の「義務」として、首長の同意を得て市町村に事務を移譲した。しかし沖縄、宜野湾、宮古島の3市長が投票不参加を表明し、うるま、石垣の2市長は態度を保留している。5市の有権者数は県全体の約3割に上る。