社会
沖縄フェイクを追う~ネットに潜む闇~

部品落下「自演だろ」 恣意的編集で悪意凝縮 連載「沖縄フェイクを追う ネットに潜む闇」〈8〉~まとめサイト❶

 密度の濃い悪意がパソコンの画面上に映し出された。

 「自演だろ 自首して刑務所に行け」

 「被害者アピールだ」

 「自作自演 恥を知れ」 「中傷ってのはテメーらが米軍にしたことだ」

 インターネット上のあるサイトを開くと、刃物のように鋭利な言葉ばかりが並んでいた。ページの上から下まで続く攻撃的な文面。一つ一つ読むと、微妙に文体や表現の仕方が違う。複数の人物によって別々に書かれたであろう短文が1カ所に集められ、侮蔑(ぶべつ)の言葉にあふれていた。

 目の前にしているのは「まとめサイト」と呼ばれているサイトだ。これまでファクトチェック取材班が取り上げた「netgeek(ネットギーク)」のようなサイトや「2018年沖縄県知事選について考える」というブログとは違った種類の発信媒体だ。

 「まとめサイト」とは何か。主にネット上で公開されている「5ちゃんねる」(旧2ちゃんねる)などの匿名掲示板のスレッド(話題)の中に投稿される文章を運営者が恣意(しい)的に集め、記事をつくる。話題は趣味や身近な話題など多岐に及ぶが、差別や中傷をあおる記事も少なくない。

 そうした記事をつくるサイトの運営者は、新聞やテレビなどが報じた出来事について掲示板などに投稿されたより過激で攻撃的な意見や感想を集める傾向にある。誹謗(ひぼう)中傷や攻撃的な言葉が一つに集められることで、より先鋭化する。そして共感した読者がSNS(会員制交流サイト)で共有(シェア)することで一気に拡散する。

 そのような「まとめサイト」がつくる記事を見る限り、標的に向けた一方的な攻撃ばかりが多数を占める印象を受ける。対象となった個人や組織が見たとすれば、そこから受ける痛みは計り知れない。

 冒頭で紹介した心ない言葉がネット上でぶつけられたのは、突然思いもよらない事故に遭い、恐怖に見舞われた沖縄の被害者に対してだった。


緑ヶ丘保育園に対する中傷があふれるサイトを見る神谷武宏園長(手前左)と保護者ら=4日、宜野湾市の緑ヶ丘保育園

 2017年12月7日、宜野湾市の緑ヶ丘保育園(神谷武宏園長)に米軍ヘリの部品カバーが落下した。「ドーン」。クリスマスの出し物の練習中に衝撃音が響き渡り、園児約60人は「わー」「怖い」などと悲鳴を上げた。

 園に駆け付けた保護者は涙をぬぐいながら、園児を抱きしめた。幸いけが人はなかったが、米軍基地あるが故に起こった事故は、いつかまた起きかねないという不安や恐怖を植え付けた。

 事故が直接、園児や保護者に与えた影響も大きかったが、さらに被害者の心の傷口に塩を塗る行為を楽しむかのような記事が「まとめサイト」で次々とつくられた。

 米軍が事故の関連を否定する報道が流れると「まとめサイト」では部品の落下自体が園の「自作自演」と断定し、園長らを中傷する記事を量産した。「まとめサイト」などで攻撃的な言説が飛び交うと同時に、園に対し中傷の電話やメールが殺到した。心ない攻撃の言葉はネットからあふれ出し、現実を侵食した。

 ファクトチェック取材班は緑ヶ丘保育園を訪ね、事故後に園を誹謗中傷した記事を多数発信した「まとめサイト」を神谷園長や保護者に見てもらった。画面を追う園長の顔は次第にこわばった。

 「園に直接あった電話やメールの言葉とほとんど同じだ」とつぶやいた。「真実を知らずに、事故の被害に遭った側を“自作自演”とばかにする。人間としてしてはいけないことだ」。園長は必死に声を振り絞った。
 (ファクトチェック取材班・安富智希)