〈解説〉県民投票 県、与党の意向尊重 問われる説明責任


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 名護市辺野古の新基地建設の是非を問う県民投票の実施が5市で不透明になっている中、玉城デニー知事は、県が市に代わり投票事務を行うのに必要な条例の改正はしない判断を下した。背景には、県議会で一度可決された現在の条例で全市町村での実施を目指すべきだという県政与党の強い意向があるとみられる。与党県議の間には、投票実施を拒否した市長の対応を批判する声が強い一方、条例改正には慎重な意見が多い。実施されない市では住民が管理する自主投票型方式で行うべきだとの議論もある。

 条例改正には時間がかかり、事務の準備に要する時間を考えると、投票日を変更するのかどうかを判断するタイムリミットが迫っていた。那覇市では投票用紙の印刷の発注を終えており、一度決めた日程をずらすことは容易ではない。5市から選挙人名簿の提供を受けられるかも不透明で、閲覧し書き写すとなると膨大な作業が必要となる。転居の多い年度末にもかかり、4月には衆院沖縄3区補選もあるため、選挙と住民投票が重なる懸念もある。

 玉城知事は、協力を拒む市長には説得を続ける考えだが、不参加を表明した市長の態度を変えるのは極めて困難な情勢だ。

 県民投票条例を直接請求した「辺野古」県民投票の会からは条例を改正し選択肢を変えて市長に翻意を促す提案もあったが、本格的に議論されることはなかった。「民主主義」の理念を強調する玉城県政だが、県と与党が決断に至るまでにどのような議論があったのか、会見で説明は尽くされなかった。全市町村で実施できない場合の対応だけでなく、有権者に丁寧に説明する責任も問われる。 (中村万里子)