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『新しい提案』 分断乗り越える処方箋

『新しい提案』 新しい提案実行委員会編 ボーダーインク・1836円

 「普天間・辺野古」の問題が、これほど長期にわたって深刻な政治・社会的ダメージを及ぼすと予測した政治家や官僚は日米にいただろうか。

 沖縄の保守県政は米軍普天間飛行場の「県内移設」を許容する民意の醸成が極めて困難であることを当初から認識し、代替施設の使用期限を15年とするなど条件付きで政府との妥協点を探る努力を試みた。しかし、政府は2006年の在日米軍再編合意に伴い、「地元の合意が得られなくても工事を進める」という民主主義の手続き上、極めて不穏当な錯誤状態に移行した。

 この致命的な政治判断を歴代政権が踏襲することにより、県と政府の軋轢(あつれき)は必然的に増し、結果的に沖縄県民とそれ以外の国民、政府、米軍のいずれもが不利益を被る事態を招いている。

 なぜこれほど明白な不条理を解消できないのか。本書の問題意識はこの点にある。

 本書は、日米のはざまで常に「固定的少数者」に置かれる沖縄の民意を、いかにして政治の回路に乗せられるかという「戦術」を提案している。「辺野古」の進め方はおかしいと感じている人は本土でも少数ではない。主著者の安里長従は、本土の沖縄に対する「構造的差別」をベースに論じながらも、どうすれば分断を乗り越えられるのかに主眼を置く。そのためのツールが「民主主義」である。

 大事なのは「結論の押し付け」ではないこと。本書が求めるのは、「公正で民主的なプロセス」である。だからこそ、政治的な主義主張を超えて互いに歩み寄る素地があるのだ。

 本書は「本土でもできること」の手引きとして地方議会への陳情書や意見書案も掲載している。東京都の小金井市議会が昨年12月に可決した意見書の元になったのも本書である。

 県民にとって切実なのは、基地問題をめぐって分断される理不尽の解消だ。その根本原因に目を向ける動きは沖縄内部で日々深化している。

 本書はその処方箋としても有効なヒントを提示しているのではないか。

 (渡辺豪・「オキロン」コアエディター)

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 新しい提案実行委員会 責任者・安里長従、執筆者は幸地清、比嘉まりん、平敷屋朝楠、金城馨、大城尚子、親川志奈子、元山仁士郎、新垣毅、半田久之、明日川融、小久保哲郎、笹沼弘志、乗松聡子、三雲崇正、武田真一郎。


 

新しい提案実行委員会編
四六判 271頁

¥1,700(税抜き)