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私がいま、詳しく知りたいと思う人は焦土と化した沖縄の人たちを笑いで元気づけた小那覇舞天である。歯科医をやりながら舞台に立った彼は、家や畑、それに家族を亡くした人たちに「生き残った命のお祝いをしましょう」と呼びかけた。
「人が死んだのだ。どうして笑えるのか」と非難もされたが、彼はこう言った。
「このようなときだからこそ命のお祝いをするんです。今度の戦争では、ほんとにたくさんの人が亡くなりました。だから、命の助かった者たちがお祝いをして元気を出さないと、亡くなった人たちの魂も浮かばれません。四人に一人が死んだかもしれませんが、三人も生き残ったではありませんか。さあ、華やかに命のお祝いをしましょう」
こうした笑いは無法な権力者を恐れさせる。そのことをわかっているのが2人の著者である。テーマはいろいろだが、一貫しているのは「泣くより怒れ」もしくは「泣くより笑え」。
たとえば、中山は2014年の大みそかのNHK紅白歌合戦でのサザンオールスターズの桑田佳祐の歌に触れる。
ライブ会場からの中継でわかりにくい感じもあったが、桑田はヒトラーのチョビひげをつけ、「ピース(平和)とハイライト(極右)」という安倍政権批判の歌を絶唱した。
♪都合のいい大義名分で争いを仕掛けて
裸の王様が牛耳る世は…狂気
これを中山は「実にあっぱれ、痛快だった」と書く。
そして「桑田さんは安倍政権の極右志向に戦争の恐怖を感じているに違いない」と続けているが、安倍も恐怖を感じていないわけではない。
あの安保法制ならぬ戦争法制への反対運動の中では、自民党と手を組んだ公明党も同罪だとして、「自民党に天罰を! 公明党に仏罰を!」というプラカードが掲げられた。辺野古への土砂投入に対しても屈せず反対する人々に恐怖を感じているから居丈高になる。そんな安倍をこの本はさらに追撃する。
(佐高信・評論家)
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やざき・やすひさ 1933年東京生まれ。新聞記者を経て65年創刊の「話の特集」を30年にわたり編集長と社主を兼務。なかやま・ちなつ 1948年熊本生まれ。8歳で俳優デビュー。70年代には俳優・司会者・歌手として活躍。その後文筆活動に専念。著書多数。