県民投票「権利奪うな」 宜野湾市の67歳男性 爆音へ意思示したい 「転居してでも」かなわず


この記事を書いた人 Avatar photo 斎藤 学
「県民投票なのだから、全ての県民に権利を認めてほしい」と訴える宜野湾市の男性=12日、宜野湾市

 米軍機のごう音が、室内に響き渡った。「毎日この爆音に悩まされ、事故の危険におびえて生活している。県民投票で意思表示をしたい」。宜野湾市の男性(67)は自宅で怒りをあらわにした。2月14日の告示まで1カ月を切った。宜野湾市での実施は見通せない。男性は近隣市町村への転居も真剣に考えたが、今からでは投票資格は得られない。何とか投票したいと、切実な思いを抱く。

 11日午後9時すぎ、琉球新報編集局に1本の電話が入った。「宜野湾市に住んでいる。今から近隣自治体に引っ越したら、県民投票はできるのか」。男性の痛切な声だった。

 県によると、県民投票条例では投票資格は公選法の規定による。これから転出しても、2月24日までに他市町村で投票権を得ることはできない。男性にそう伝えると「やっぱり難しいか…」と声を落とした。

 生まれも育ちも宜野湾市。県外で働いた4年間を除き、ずっと同じ地域で暮らしている。12日、自宅で取材中、オスプレイなど米軍機の音で会話が中断された。「うり、まただよ。防音工事しても、全然効かない」とあきらめ顔。男性の妻は「子どもが小さい時は音にびっくりして震えていた」と話す。

 「辺野古」県民投票の会の元山仁士郎代表(27)は宜野湾市在住。「地元の青年が頑張って、ここまで来た。心が痛まないのか、市長に聞きたい」と、不参加を表明した松川正則市長に疑問を呈する。

 今回の県民投票は名護市辺野古の埋め立ての是非を問う。男性は「仮に埋め立てられても、普天間が返還される確証はない」とし、県外・国外への移設を望む。県内に新たな基地を造れば、米軍絡みの事件事故のリスクは消えないとも考える。

 子や孫がおり「表立って反対したら迷惑が掛かるかも」と懸念する。1、2年前は辺野古へ抗議に行っていた。最近は体力的な衰えもあり、参加できていない。「辺野古に行けないけれど反対と示したい人は多いと思う。県民投票の意義は大きい」と話す。

 「実施に反対した市議や市長は、市民のことを考えていない。権利を奪うような行為はおかしい」と強く批判する。埋め立てに賛成でも反対でも、県内のどこに住んでいても、同じ沖縄県民。全市町村で実施できるよう願い、投票日まで県や市の動きを注視するつもりだ。
 (前森智香子)