◆矢野 恵美(琉球大法科大学院教授)
糸満市や児童相談所は母親へのドメスティックバイオレンス(DV)を認識していた。面前DVは子どもへの虐待の一つだ。糸満市は一家を「ハイリスク世帯」と捉えている。「虐待の事実を確認できなかった」などの言い訳は通用しない。
学校は3者面談で虐待を確認したというが、加害親と被害児童を同席させた面談で虐待の事実が分かるわけがない。厳しい言い方になるが、地方公共団体や児童相談所、学校は、自分たちが女児を見殺しにしたも同然だと自覚してほしい。
今回、糸満市の家庭訪問が親の都合で2度とも延期になり、会えなかった。なぜ親の都合を優先するのか。最も大切にすべきは子どもの人権。子どもは親の持ち物ではない。
ただ、学校も児童相談所も人手が足りていないのが現状だ。虐待を受けている子どもたちに丁寧に対応できるよう、人員配置を見直す必要がある。専門知識教育も必要だ。暴力はしつけではない。民法の中の親の懲戒権を認める規定削除も急務だ。これらは社会の責任。考え方、制度、法を変えていかないと虐待死はなくならない。
(被害者学、ジェンダー法)