相続不明地、初の調査 沖縄県内20市町村で2500筆判明 公共事業に支障


この記事を書いた人 大森 茂夫
那覇地方法務局の委託を受け、30年以上、相続登記が行われていない土地についての調査を始める司法書士ら=那覇市おもろまちの県司法書士会館

 那覇市や沖縄市、名護市、宮古島市など20市町村で、「相続登記」が30年以上行われていない土地が少なくとも約2500筆あることが2日までに分かった。相続登記がなされない土地が公共事業の障害となる事例は全国で相次いでおり、県内でも道路建設などに支障が出ている。ほとんどの自治体は相続登記していない土地の面積や正確な筆数を把握していないのが現状だ。こうしたことから那覇地方法務局は2018年11月から相続登記が長年行われていない土地の相続関係を調べる事業に初めて着手した。約2500筆の相続関係を3月末までに調べる。

 相続登記は土地など不動産の持ち主が死去した際、所有権を相続人に移す手続き。相続登記が長年行われていない土地は公共事業や災害復旧の支障になるばかりでなく、土地が荒廃して景観や治安の悪化につながるなどの例があり、深刻な問題となっている。

 相続登記が行われないまま数十年が経過した土地は多くの市町村に存在し、中には相続の権利者が2代、3代にまたがって数十人から100人規模に広がっている例もある。ほとんどの自治体は実態調査を行っておらず、相続登記がなされていない土地が放置されている。

 相続登記がなされない土地が増えている背景には親族関係の希薄化が進み、相続人の確認が難しくなったことがある。移民県だった沖縄独特の事情として、相続人が県外や海外に住んでいる場合が多いことも相続登記の妨げになっている。

 今回調査に着手した那覇地方法務局は公共事業の円滑推進などに備え、相続人を確定し、土地を活用できる環境を整える考えだ。調査を担当するのは入札を経て那覇地方法務局から委託を受けた県内の司法書士68人。登記簿にある土地所有者の生死を確認し、亡くなっている場合は相続人全員を追跡調査して戸籍などを集め、亡くなった所有者と相続人らの関係などをまとめた相続関係図を作成する。その上で、同局が相続人へ相続登記を依頼する通知を出す予定だ。

 那覇地方法務局は本年度調査の実績を踏まえ、次年度以降も調査事業を継続する考えだ。同局の佐藤典康首席登記官は「来年度以降も市町村から挙がってきた土地を(調査対象候補として)検討していきたい」と市町村からの情報を呼び掛けた。

(古堅一樹)