『親子で学べる「那覇まち物語」』 歴史・地理知り広がる思考


社会
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『親子で学べる「那覇まち物語」 ―那覇のむかしと今が地図・イラスト・写真でわかる物語―』なはナビ友の会編 沖縄時事出版・1404円

 本書は、長年、学校教育に携わってきた方々が子ども目線にたって執筆されたものである。

 子どもたちが分かりやすいように本文をまとめ、一つのテーマを見開きにし、本文を左ページに、地図や写真、イラストを右ページに配置してある。親子で学びやすい工夫であり、著者の優しい気くばりである。内容は「児童・生徒に伝えたいことを26項目選んだ」とのこと。どの項目も読みたくなる内容であり、分かる喜び、学ぶ楽しさを味わうことができる。

 那覇は「ナハユマチ」と呼ばれ、四つの町であったことは知られているが、4町がどこで、どのようになっていたかは、あまり知られてない。本書を読むと、那覇のまちは西村、東村、若狭村、泉崎村の四村で始まったことが面白いほど分かる。さらに「那覇港図」の資料を見ると、4町の位置関係も明確になり「なるほど」と納得する。「世界にほこれる銘酒~泡盛」の項目では、泡盛と首里王府のかかわりが鮮明に理解でき、那覇に塩田があったことも直に探索したくなる。

 モノクロとカラーの写真は、いにしえの時と今をつなぎ、「温故知新」―ふるきをたずねて新しきを知る―のにきわめて効果的である。イラストも人々の表情や情景が巧みなタッチで描かれ潤いを与える。本の扉には、子ども2人と白いひげの老人が龍(りゅう)に乗って空から降りてくるイラストがあり、子どもらは「長虹堤だ」と歓声をあげている。そこには、むかしの栄華を彷彿(ほうふつ)させる歴史のロマンを感じさせるものがある。

 特別に資料のページもあり、資料を通して思考がより深まっていく。末尾の「那覇市役所」の年表は役所の変遷が一目で理解でき共感できる。

 本書は本文でことを知り、資料で考えさせ、知り得たことを探究させる「親子でやさしく学べる良書」であると思っている。

 「歴史は過去との対話である」とも言われる。本書からむかしと今の那覇が分かり、未来の那覇を考え、対話が生まれ、そこから那覇を中心に同心円的に思考が広がっていく。本書がそのように活用・愛読されることを期待したい。

 (山内彰・沖縄女子短期大学客員教授)

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 なはなびとものかい 久高将宣氏を会長に、退職校長と元大学教授ら12人で構成する。2012年に当時の那覇市長だった翁長雄志氏から「親子で学べる物語を編集してほしい」との話を受け、真栄田義勝編集委員長を中心にして取り組んで制作した。

 

親子で学べる 那覇まち物語
なはナビ友の会
沖縄時事出版 (2019-01-15)
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