沖縄の「非暴力の抵抗」を伝える拠点を巨大鬼面が守る理由 伊江島・わびあいの里


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修復した鬼面を前にする制作者の金城実さん(左端)、「わびあいの里」の謝花悦子理事長(右端)ら=1日、伊江村の「わびあいの里」

 【伊江】伊江島の歴史や故阿波根昌鴻さんの足跡を伝える沖縄県伊江村東江前の「わびあいの里」(謝花悦子理事長)の門に掲げられた鬼面が経年劣化で傷み、制作者の彫刻家・金城実さん(80)が3日までに修復した。元の作品に改良も加え「うまくいって満足している」と金城さん。作品を見つめ、今は亡き阿波根さんに思いをはせた。

 鬼面は高さ約1.9メートル。1987年に制作された。制作時は台風接近のため本部港から船が出ず、名護市内で作った物を島に持ち込んだ。期間が短かったこともあり、金城さんは「満足いく出来ではなかった」との思いが残っていたという。

 今回の修復は、同村真謝で阿波根さんらが抵抗の拠点としてきた「団結道場」が修復されるのに合わせた。4日間かけて基礎の鉄骨やセメントを入れ替えるなどした。金城さんは長年の宿願を果たし、「30年以上たつのでかなり傷んでいた。満足のいく出来になった」と言う。

 作品で鬼をモチーフにしたのは、本土と沖縄で鬼のとらえ方が違うためだと金城さん。沖縄の「ムーチー」は子どもを食べた鬼と、食べられた子どもの両方を供養する餅が由来とされ、一方で本土では、戦時中に「鬼畜米英」という表現が多用されたことを例に挙げる。

 金城さんは「本土では鬼は侵略戦争や排外主義に使われた。一方『ムーチー』は平和の礎と同じく、加害者と被害者を共に供養する考えだ」と説明。「(沖縄の鬼の考え方は)全ての宗教などを抱え込む阿波根昌鴻先生の平和論とも合致する」と強調した。

 わびあいの里の謝花理事長は「阿波根は生前『この鬼面は、わびあいの里に悪いものが入らないようにする門番』と言っていた。半永久に残る大変意義のあるものだ」と喜んだ。
 (塚崎昇平)