米軍嘉手納基地から派生する航空機の騒音被害について、沖縄防衛局の田中利則局長が「瞬発的で、人体への影響は科学的に立証されたものではない」と繰り返し発言した。田中局長が科学的根拠を否定した騒音による健康被害は、2017年の第3次嘉手納爆音訴訟で一部認める判決が出ている。
航空機騒音が周辺住民の健康や命に関わる深刻な問題だとして早期改善を求めた議員らに対し、田中局長は防衛局としても周辺住民の負担軽減に努めていく意向を示したが、航空機の騒音はあくまで「瞬発的で、人体への影響は科学的に立証されたものではない」と発言した。
これに対し、高安克成議員が外来機の飛来などで騒音被害が増幅していると指摘すると、田中局長は「地域住民の精神的負担感などは承知し、否定するつもりは一切ない」と話しつつも「人体に与える影響は、医学的見地から因果関係が立証されていない」と繰り返した。
司法の場では…
嘉手納基地から派生する騒音被害については同基地の周辺住民2万2千人が、国を相手に夜間・早朝の飛行差し止めや騒音被害に対する過去、将来分の損害賠償を求め裁判で争っている。「第3次嘉手納爆音訴訟」と呼ばれる裁判で、2017年2月に那覇地裁沖縄支部で判決が出ている。
その中では、爆音による生活妨害や睡眠妨害に加え「高血圧症発症の健康上の悪影響のリスク増大も生じている」として原告側が主張していた健康被害の一部を認定している。一方、難聴や虚血性心疾患のリスク増大などについては「証拠が足りない」として認めていない。
那覇地裁判決(2017年2月23日)の該当部分
「W75以上の地域に居住する原告らには、会話、電話聴取やテレビ・ラジオの視聴や家族団らんなどの日常生活のさまざまな面での妨害、不快感や不安感などの心理的負担または精神的苦痛、睡眠妨害、さらには高血圧症発生の健康上の悪影響のリスク増大も生じており、これらがいずれもW値の上昇に伴って増加していることを認定することができる。これらの被害は、日常生活に不可欠な諸活動を阻害するものといえ、健康上の悪影響のリスクも増すことも踏まえれば、法律上保護に値する利益を侵害するものといえる」