芸能・文化

『〈ヤンチャな子ら〉のエスノグラフィー ヤンキーの生活世界を描き出す』分断された若者描く

 本書は大阪の〈ヤンチャな子ら〉が高校から卒業後に働く過程を描いた本格的なエスノグラフィーである。14人の〈ヤンチャな子ら〉が学校、家庭、労働世界で、もがきながら生きる姿が生き生きと描かれている。

 そこで描かれる若者は、地場産業の後継者や地元祭りの担い手ではない。また相互に団結して敵対する暴走族と激しく抗争を繰り返すかつてのヤンキーでもない。むしろ、彼らは住む場所や仕事を転々とし、集団内のポジション取りをめぐって争い合う分断された若者たちである。彼らの仕事の流動性や集団の多様性からは、2000年代の大阪に流れる重い空気を感じた。

 コウジ(仮名)は、〈ヤンチャな子〉のひとりだ。父親は、彼が小さい頃に自死した。彼は母親、きょうだいたちと生活保護を受けながら暮らした。「食べる物もないし電気もガスも切られ」、住む場所も転々とした。

 コウジ「でも、おれとかまだましやで。アフリカの子とかテレビで見てたらほんま食うのがないとかあるやん。足がないとかな。そんなんに比べたらおれは食うもんない言うても、そのへんで選ばんかったら拾って食えるし、足もちゃんとあるしな」

 知念「でも比べたらそうだけど、きついもんはきついよな?」

 コウジ「きついけど、でも、比べんねん」

 コウジは生活困窮世帯で育った。そのため、彼は兄の大きめの学ランを着用した。それを理由に彼はいじめを受け、学校を休みがちになった。そんな彼は、ジャージを着て、再び学校に向かい、〈ヤンチャな子〉となった。

 私はコウジに会ったことはない。しかし本書には彼のことを理解できる記述がたくさんあった。彼が家庭の困窮状態をアフリカの子たちと比べるわけ、学校にジャージを着ていくわけがよく分かった。また大阪という街の光景が広がっていった。良質なエスノグラフィーを読むと、登場人物との距離が縮まり、想像力がとまらなくなる。コウジは沖縄にもいるのかもしれない。

 (打越正行・沖縄国際大学南島文化研究所研究支援助手)

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 ちねん・あゆむ 1985年南城市生まれ。神田外語大学外国語学部講師。専攻は教育社会学、家族社会学。共訳書にトニー・ペネットほか「文化・階級・卓越化」(青弓社)など。

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