米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を進める沖縄防衛局は4日、辺野古崎東側で新たな護岸「K8」の造成作業を開始した。25日にも始まる新たな埋め立て区域への土砂投入に連動し、土砂の陸揚げ場所を増やす狙いがあるとみられる。K8の建設予定の海底や周辺にはサンゴ群が生息しているが、防衛局は移植せずに護岸の一部の工事を進めることが可能との認識を示している。サンゴの生物学を専門とする大久保奈弥東京経済大准教授は「潮の流れが変わり、北側のサンゴの致死率が高まる」と指摘した。
新基地建設全体で防衛局が着手した護岸としては9カ所目となる。1月末に始めた護岸N4の建設で石材が予定の長さに達し、隣接するK8の工事に入った。防衛局は4日、K8建設予定海域に工事による濁りが広がるのを防ぐため、汚濁防止枠を設置した。石材の投入には至らなかった。
K8は全長515・1メートル。沖合に向けて工事を進め、サンゴ群まで約50メートルに迫る250メートルを造成する予定だ。当初、K8予定地に生息するサンゴ類を移植する方針だったが、県から許可が得られず、一部であれば移植せずに工事が可能だとした。防衛局調達計画課は、土砂の陸揚げ場所として護岸を利用するかどうかや施工期間など工事の詳細について「今後の工事については気象や海象も踏まえる必要があるため、答えを控える」と述べるにとどめた。
新基地建設に反対する市民はこの日、キャンプ・シュワブゲート前と投入用土砂が搬出される名護市安和の桟橋前で作業に抗議した。ゲート前では、新たな護岸着工に「民意を無視するな」と声を上げた。抗議活動参加者によると、ダンプトラック計327台がシュワブ内に資材を搬入した。安和では計473台が桟橋に土砂を運び入れた。海上は波が高く、抗議船やカヌーを出せなかった。
<解説>工事加速 つながらず
米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設で政府が新たな護岸造成に着手したのは、25日にも開始を予定する新たな埋め立て区域への土砂投入を見据えた動きだ。新たに造成する護岸を土砂の陸揚げ場所として使い、工事を加速させて既成事実を積み上げる狙いが透ける。しかし現在着手している辺野古側の工事を急いで進めても、大浦湾側の工事が残されており、将来的に必要となる工期は短縮されない。
沖縄防衛局が県に提出した埋め立て承認申請書によると、政府が当初計画で必要だとしていた「5年」の大部分は大浦湾側の工事にかかる期間だ。水深が比較的浅い辺野古側の工事は大浦湾側と並行して施工する予定だったため、工期に影響はない。県は「大浦湾側の護岸に着工しない限り、辺野古新基地建設に要する期間は未着工の時と変わらない」(国土交通省に提出した意見書)と指摘している。
実際、大浦湾側については軟弱地盤が見つかったため大部分で着工できておらず、一部は護岸の設計さえ示せていない。さらに着工前に最短で5年かかるとされる地盤改良も必要だ。そんな中で辺野古側の工事だけを進めても、防衛局の工程上、新基地完成までの工期が短くなることはない。
こうしたことから、辺野古新基地建設が普天間飛行場の早期返還につながらないと指摘されている。辺野古移設か普天間固定化かを選ばせる政府の二択論法も根拠が揺らいでいる。2月の県民投票では投票者の約7割が辺野古の埋め立てに反対した。政府はこの結果や自然環境への影響を度外視して工事を進めているが、工期短縮につながらない作業を続けているといえる。
(明真南斗)