台湾出身の蔡抒帆(ツァイスーファン)さん(37)は、5歳の長女・呉屋萠唯(めい)さんを育てながら、沖縄県宜野湾市の県自立生活センターイルカで事務局長として働いている。夫の呉屋大地さん(29)との出会いは2011年。県の共生社会条例の制定に向け障がい当事者らが主導した署名運動に台湾から参加し、大地さんと知り合い結婚した。
蔡さんは19歳のころ交通事故で脊椎を損傷した。歩行が不自由になり車いすを使っている。「なぜ、自分がこんな目に」。自暴自棄になったが、大学在学中に日本の障がい者関係施設での研修を通して、生き生きと暮らす障がい者たちと出会った。「普通の生活はできる。周りの偏見や環境こそがバリアー」と実感し、自信がついた。
2014年に沖縄に移住して気付いたのは男女格差だ。親戚宅に行くと、男性が座ってお酒を飲み、女性は台所で立ち働いている。母親が育児をするのは「当たり前」。父親の育児参加がもてはやされる風潮に疑問を抱く。
家事も子育ても夫婦で分け合ってが“当たり前”の台湾の暮らしを知る蔡さん。個人よりも「性」で区別されがちな日本社会のさまざまな場面で「おかしい」と感じている。