社会

騒音で心疾患 推計51人 北海道大・松井教授分析 嘉手納周辺 高リスク

墜落事故を受けて一時中止していた飛行訓練を再開する米軍F15戦闘機=2018年6月、嘉手納基地

 北海道大学の松井利仁教授(環境衛生学)が13日、沖縄県庁で記者会見し、米軍嘉手納基地周辺の騒音により同基地周辺に住む住民が虚血性心疾患で毎年10人死亡し、51人が同疾患にかかっているとの推計結果を発表した。松井教授は、県や市町村が嘉手納基地周辺の17カ所に設置した騒音測定器の2014年度の測定値を用いて、18年に世界保健機構(WHO)欧州事務局が改訂したガイドラインに基づき分析した。松井教授は「健康への影響が生じる頻度で、夜間騒音が発生している。(病気の)リスクは高まる。死亡者数は無視できないレベルだ」と強調した。

 松井教授は09年の欧州夜間騒音ガイドラインに基づき15年にまとめた推計結果と比べ、18年のガイドラインでは睡眠への影響を受ける比率が2倍以上増え、心疾患のリスクがより低い騒音値から生じ、健康影響を受ける人がさらに多いと報告した。高度の睡眠妨害をもたらす騒音にさらされている人は1万7454人だった。

 松井教授は今回、夜間に発生するエンジン調整や離着陸前に移動する音などの地上音を推定し、嘉手納町、北谷町、沖縄市、読谷村、うるま市などの住民への健康への影響を示した。これまでの騒音コンター(分布図)では、騒音が低いとみられていた地域も地上音を含めると高い値になることが分かった。松井教授は「これまで地上音が調査されておらず、騒音被害が過小評価されていた」と強調した。

 松井教授は今回のガイドラインには脳卒中やがんの疫学調査が含まれていないとし、「脳卒中は心疾患とも連動するため、さらに研究が進めばさらに推計した死亡者数の値が上がる可能性がある」と指摘した。

<解説>実態解明 急を要す

 

 北海道大学の松井利仁教授の調査で、米軍嘉手納基地周辺に住む住民が健康被害を受けているとの試算が示された。年間10人が夜間騒音による睡眠妨害による心疾患で死亡し、1万7千人以上が睡眠妨害を受けているとの推計結果に対する実態の解明が急がれる。

 松井教授は、夜間の騒音による睡眠妨害が健康被害につながることを指摘した。嘉手納基地では訓練以外にも深夜・早朝に偵察機などが任務として頻繁に離着陸するほか、エンジン音や地上を走行時に発生する地上音も長時間発生する。午後10時から午前6時まで離着陸を制限すると日米で合意した騒音規制措置(騒音防止協定)は形骸化しているのが実情だ。

 第3次嘉手納爆音訴訟の那覇地裁判決は1999年にWHOが策定したガイドラインに基づき、爆音が高血圧症発生のリスクを増大していると健康被害を認めた。さらに新たな知見が得られ、健康被害がより大きいことが浮き彫りになった。

 沖縄防衛局長が「人体への影響は立証されたものではない」と発言し、住民から反発を招いた。沖縄防衛局は住民の健康被害に目を向け、住民が切に願う夜間騒音をなくすよう米軍に働き掛けることが求められている。
 (清水柚里)



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