「責任を押し付けられた」 寒い夜倒れ 後遺症今も 26歳で脳梗塞 労災認定


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スマートフォンに残っている長時間労働をしていた当時の記録を確認する女性=15日、那覇市(画像は一部加工しています)

 携帯電話販売店の店長として勤務している際、脳梗塞で倒れ、労災認定を受けた女性(31)は15日、本紙の取材に「ブラック企業の問題は、働いた経験のある人が声を出していかないと解決しない。企業側は『やりがいがある』と、いいことしか言わない。仕事の責任を1人に押し付けられていたと思う」と語った。

 女性は大学卒業後、新卒で入社した。最初の内定を受け、「うれしかった」と当時を振り返る。労働条件はシフト制、8時間勤務、社会保険完備。携帯大手の代理店という「看板にも安心した」という。

 入社4年目、25歳で店長になった。待遇はほぼ変わらないが、業務量は大幅に増えた。会議の参加に指導報告書の提出、ノルマ達成の管理―。商業施設内の店舗で働くのは女性を含む3人で、1人は妊娠中、もう1人は後輩。上司に相談できる雰囲気もない中で、「私が頑張らなきゃ」と精神的に追い詰められた状態が続いた。食事は10分程度の短時間に急いでかき込む毎日。タイムカードの打刻後にも働くのが当たり前だった。

 店を訪れた社の幹部に店舗の汚れを指摘され、一層過敏になった。午後9時の閉店後、商業施設が閉店する深夜まで1人で残り、清掃や事務処理を続けた。

 2014年1月、販促イベントの最終日、応援に来た同僚の「店舗が汚い」という一言に、疲れ切っていた心と体の糸が切れた。涙が止まらず、トイレにこもって3時間ほど泣き続けた後、ようやく業務を終え、午後10時半ごろ、1人暮らしのアパートに帰宅した。

 寒い夜だった。トイレに入った途端、右半身に力が入らず倒れた。翌日、母と病院に行くと、医師に「大変なことになっている」と言われ、脳梗塞と診断された。

 半年間の入院生活で当初は歩くこともできず、全て介助が必要だった。「リハビリを頑張って新しい人生を始めたい。会社とは関わりたくない」と思っていたが、医師に「後遺症が残る」と言われ、納得できないという思いがこみ上げ、労災申請を決意した。

 今も右手の感覚は鈍く、階段の上り下りには支えが必要だ。現在は無職で、週1回のリハビリを続けながら、新聞記事が「今も無理をしながら働いている人たちの目にとまってくれれば」と願いを込めた。