『オキナワモズクとフコイダンのお話し』 「沖縄の宝」輝くために


社会
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『オキナワモズクとフコイダンのお話し』長嶺竹明、伊波匡彦、伊藤麻由子著 沖縄イニシアティブ・1944円

 モズクの酢のものは、家族で囲む食卓によく並ぶ。外に出れば、大衆食堂の定食にも、お呼ばれの会席料理にも付いてくる。調理に手間いらずの一品は、食欲をそそり、独特のぬめりが体に良さそうだと実感する。

 このオキナワモズクから抽出されるフコイダンの栄養と効能がすごい、と言われて久しい。以来、フコイダン由来の製品が市場に出回っているが、本書はこうした現状を検証し、モズクとフコイダンの未来を考察する。

 モズクの新しい用途を開発すべく、フコイダンの大量生産技術の研究に取り組み、その成果を事業化した伊波。群馬大学第一内科で肝臓病の診療・研究をするなか、フコイダンが肝臓がんの治療薬として有用であることを発見したわが小中高の同期生・長嶺。

 2人は、科学的根拠に基づくモズクとフコイダンの書物がないことから、出版を決意。モズクの栽培技術とフコイダンの抽出精製について伊波が、フコイダンの消化吸収と機能性に関して長嶺が、それぞれ章立てて執筆した。専門的知見や難解な用語が並ぶことから、写真や図、さらにはコラムを挟むなど伊藤が理解しやすくリライトした。

 きれいな海でしか育たないオキナワモズクは、その栽培技術が沖縄で開発され、世界生産の90%以上が沖縄産だという。まさに「沖縄の宝」であり、市場を広げ、付加価値を高めていくうえで優位性があるのだ。

 さらに、この宝物が輝くかどうかは「医薬品に使えるかどうかだ」と断言する。しかし「現時点でフコイダンは薬ではなくて健康食品」で、ネット上には多岐にわたる効能書きが検索されるが、このままでは「地道な研究を積み重ねてようやく証明されたフコイダンの有用性が否定されかねない」との懸念も。

 その中で、医療に携わる長嶺は「まだまだ楽しめそうな、研究に飽きない素材」で「臨床試験で証明されるフコイダンの効能・効用が明らかになる」と今後を展望する。最終章の対談は、「オキナワモズクとフコイダンには、未来を見ることができる」と結んでいる。

 (上原良幸・会社役員)

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 ながみね・たけあき 那覇市出身。群馬大医学部卒。同大教授を経て2015年退官。現在大道中央病院副院長。 いは・まさひこ 北大東村出身。九州大学大学院薬学研究院卒。薬学博士。トロピカルテクノセンターを経て、サウスプロダクト代表取締役社長。いとう・まゆこ 横浜市出身。ルポライター。著書に「沖縄県民のオキテ」など多数。