迷う県民の受け皿に 「どちらでもない」 投票意義疑問も 県民投票から1ヵ月


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「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択で実施された2・24県民投票の開票作業=2月24日、那覇市民体育館

 辺野古新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票を行うことを定めた県民投票条例は、「辺野古」県民投票の会(元山仁士郎代表)が署名を集めて条例制定を県に直接請求し、県議会で可決されて成立した。賛否2択を問うものとして10万筆(有効数9万2848筆)に上る署名が集まっており、3択に変更することは「署名した思いを踏みにじるものだ」との葛藤も県政与党内にあった。

 この署名簿に名を連ねた県民の意思を尊重して与党は昨年10月、自民党と公明党が共同提案した4択案を否決し、2択で条例を成立させた。元山代表も「賛否を明確にさせたい」と県議会米軍基地関係特別委員会の参考人質疑で訴えた。

 ところが、県議会の採決で自公が2択案に反対したことから、保守系が市長を務める宜野湾、沖縄、うるま、宮古島、石垣の5市が県民投票を拒否した。一方で、賛否2択に「どちらでもない」を加えた3択に選択肢を増やせば、5市も県民投票を実施する方向に転じた。

 このため与党に加え、公明党と自民党の一部も条例改正に賛成し、5市長も県民投票実施にかじを切った。3択によって県内全市町村での県民投票が実現したほか、賛成でも反対でもない有権者の受け皿ともなったことがメリットと言える。賛否で割り切れない複雑な思いの県民が投票所に足を運び、投票率アップに寄与した可能性もある。

 一方で、埋め立ての賛否をはっきりさせようという投票の意義が薄れたと指摘する与党県議や県民がいたことも事実だ。投票実施を拒否していた5市長の提訴に向け具体的に動きだしていた市民もおり、3択で県民投票が実施されると、2択を拒否したことに対する「免罪符」にされるという反発も根強くあった。