5市の参加拒否が続く中で、県議会では新里米吉議長の呼び掛けにより、賛成・反対の二つだった選択肢に「どちらでもない」を加えて3択とする県民投票条例の改正案を、県政与党3会派と中立の公明と維新、そして野党の自民県議の一部も加わる賛成多数で可決した。この歩み寄りを5市が一定評価する形で全県実施に至ったが、県議の中には「首長が義務を守っていれば2択で実施できた」との不満の声もくすぶっている。
「今でも県民投票は2択ですべきだったと思っている。3択は裁判で負けることに戦々恐々としていた5市長に対する、一種の助け船だった」と語るのは、県政与党会派おきなわ会派長の瑞慶覧功県議だ。県民投票で埋め立て反対の「圧倒的民意」を示そうと取り組んでいた県政与党県議らは、県民投票の事務実施を拒否する保守系5市長に対して住民訴訟の提起など対抗措置を検討しているさなかだっただけに、急浮上した与野党協議の展開に戸惑いも広がった。
瑞慶覧氏は「地方自治法で定められた義務を首長の判断で拒否できるものなのか整理が必要だ。そもそも約10万筆の署名も2択を前提に集まった。有権者の3割超が参加できない事態に陥りそうになったことで、県民投票の大義がぼかされた」と問題点を挙げた。
一方で、全県実施に向けた条例改正を新里議長に働き掛け、自民側にも譲歩を迫った公明の金城勉県議は「3択は与野党双方が歩み寄るための一つの手法だった。選択肢を増やしても県民投票の意義は変わらない」と混乱回避で政治が果たした役割を強調する。その一方で、公明党県本自体は自民党県連と同様に自主投票として県民投票を静観した。金城氏は「結果は予想通りで想定内だ。県本も県外国外移設を求めるスタンスは変えていないが、普天間飛行場の危険性除去を放置してはならずジレンマがある。政府は当初から県民投票に関係なく工事を進めると言っていた。県民投票の効果がどれほどのものか」と距離を置く姿勢を見せる。
新里議長は「県民同士で割れていていいのか、本来の敵は政府だろうという声が多く寄せられていた。決定的な時に大同団結するのがウチナーンチュだろう。2択か3択かの議論ではなく、全県実施のために県議会は何ができるのかという沖縄総体としての大局的な判断で多くの人が動いてくれた」と総括する。「どちらでもない」の選択肢については「多数になる選択肢ではない。むしろ賛成か反対かで意思表示できない人は棄権するしかないが、これで投票に行けるようになったのなら投票率にも一定影響あるだろう。投票率が50%を超える結果を民意ではないと否定することは、今の政府でもできない」とした。