芸能・文化

高校に2年半通い取材して見えたこと 学校は中流階級の文化を押し付けていないか? 『〈ヤンチャな子ら〉のエスノグラフィー ヤンキーの生活世界を描き出す』著者・知念渉さんインタビュー

 大阪市内の高校に2009年9月から12年3月まで週1度~月1度の頻度で通い、ヤンチャな男子高校生を対象に中退者も含め観察・取材した結果を著書「〈ヤンチャな子ら〉のエスノグラフィー ヤンキーの生活世界を描き出す」にまとめた知念渉(あゆむ)さん(34)=南城市玉城出身、千葉県在住。同書は大阪大学大学院人間科学研究科の博士論文をまとめた1冊だ。調査を通して見えてきたことは「そもそも学校はミドルクラス(中流階級)の文化を押し付けていないか」という疑問だった。どのように感じたのか、思いを聞いた。


「自分はヤンキーだったというわけではない」と話す、知念渉さん=22日、西原町内

 ―学校現場に一定期間通い、生徒の高校在学中から卒業後まで追うというフィールドワークは興味深い。

 「大阪大学大学院の志水宏吉先生が、学校に通い参与・観察する研究を確立した方で、それぞれ自分のフィールドを見つけて学校に通うことが研究の一環としてあった。若者文化に興味があった。高校生の在学中から卒業後まで調査できればと思っていた」

 ―家庭状況が厳しい生徒が本には出てくる。学校の先生が気付き、生活保護の申請、1人暮らしをさせるという手厚さに驚いた。

 「いい先生が多かった。海外で支援活動をしていたり、障がい者運動に関わったりした先生もおり、私も学校に行くのが楽しかった。もっとこんな先生が増えたらいいのにと思った。校則違反を見るのではなく、その生徒自身を見ていた」

 「誰に対しても同じように扱い、形式的な平等を重んじて一律に校則を課し、(違反する)一部の生徒を排除してきた。そういう学校は変わる必要がある。生徒の親もホワイトカラーばかりではない。いろいろな職業があることを意識しておらず、ミドルクラスの文化を無自覚に押し付けていないか。私が調査で通った大阪の高校の先生のような、良い先生と出会う確率を上げたい」


知念渉さんの著書「〈ヤンチャな子ら〉のエスノグラフィー ヤンキーの生活世界を描き出す」(青弓社)

 ―知念さん自身はどういう高校生だったか。

 「髪を染めたりパーマをかけたり、口にピアスをして先生に怒られ、反省文を書かされたこともある。優等生ではなかったが、子どもが好きで小学校の先生になりたいと進路相談で伝えると『琉球大しかない』と先生に言われ、高3の5月ごろから本格的に勉強して受かった。家族も親戚も誰も大学など行く人は周りにいなかった」

 「大学では進学校を卒業してきた優等生が多く、話がかみ合わなかった。優等生的なものを批判しつつ自分もそこに身を置いていることに、もやもや感がぬぐえなかった。そのうち先生より大学で教えたいと思い、大学院に進学した」

 ―今後も若者の調査は続くのか。

 「今、関心を持っていることは二つあり、ヤンキーを批判する側の人たち、語る側を研究したい。もう一つは、子どもの貧困問題について理解が政策者に足りないと思っていたのが、実はもともと理解しようとしていないのではないかと感じた。彼らの問題とされている。どう貧困当事者が報道やネットで扱われているのか、そういう視点を洗い出したい」
 (聞き手・知花亜美)

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 ちねん・あゆむ 1985年南城市玉城生まれ。2007年琉球大教育学部卒。16年3月大阪大学大学院博士(人間科学)取得。現在神田外語大学外国語学部講師。専攻は教育社会学、家族社会学。

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