〝アセス逃れ〟際立つ強硬 防衛局、北部訓練場では実施 石垣陸自駐屯地着工1ヵ月


この記事を書いた人 大森 茂夫

 石垣市の陸上自衛隊配備計画で、沖縄防衛局が駐屯地建設工事に着手してから4月1日で1カ月を迎える。配備による自然や生活環境への懸念から、環境影響評価(アセスメント)実施を求める市民の声は根強いが、防衛局は必要性を否定。3月31日までの改正県アセス条例の適用猶予期間中の着工により、義務的なアセス実施を免れた格好となった。防衛局は米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯建設時には自主的にアセスを実施しており、今回の強硬姿勢が際立つ。

 防衛局は北部訓練場内の約3・6ヘクタールのヘリパッド建設に当たり、2002年から約5年間かけて自主的にアセスの手続きを進めた。07年の建設時は、国指定特別天然記念物ノグチゲラの営巣期(3~6月)には重機を使用する工事を控えるなど環境に配慮した。

 石垣市の配備予定地周辺では、国指定特別天然記念物のカンムリワシの飛来が確認されている。周辺で営巣している可能性があるとして、市民団体などは営巣期・抱卵期の工事中止を要請したが、防衛局は予定地とその周辺の現況調査で営巣が確認されていないとして工事を進める方針だ。

 一方で約10年間にわたってカンムリワシの動向を観察している「カンムリワシリサーチ」は、「防衛局は営巣を見つけたら工事を中断すると言っているが、工事をしていたら営巣するものもしなくなる」と危機感をあらわにする。

 防衛局は、ヘリパッド建設時の対応については「沖縄本島北部やんばる地域の貴重な自然環境保全に最大限配慮するとの観点から、自主的な判断で環境影響評価を実施した」とする。その上で、今回アセスを実施しない理由について「一般的に既に開発されている土地(ゴルフ場など)は未開発の土地とは違い、環境への影響は少ないと考えている」と説明する。

 改正県アセス条例は、20ヘクタール以上の土地造成を伴う事業にアセス実施が義務付けられる。石垣島の駐屯地の造成面積は約29ヘクタールで、本来ならばアセスの対象となるが、3月31日までに着手した事業は経過措置として適用対象外となる。「アセス逃れ」との指摘を防衛局は否定するが、県幹部は「以前は自主的にまでやっていたのに二重基準だ。ここ最近、防衛局は何が何でも工事を早く進めようとしているように見える」と批判する。

 県環境影響評価審査会の宮城邦治会長は、自主アセスのあったヘリパッド建設は、アセス手続きの中でより環境保全ができたとした上で、「法的に義務がないからとアセスをしないのは先々に大きなトラブルを起こしかねず、自然環境の調査と環境悪化回避のためにできることを考えるべきだ」と訴えた。(清水柚里、大嶺雅俊)