『未来経済都市沖縄』 日本繁栄の鍵、沖縄に


社会
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『未来経済都市沖縄』安里昌利著 日本経済新聞出版社・1728円

 本書は、沖縄をアジアの国際都市にするための「グランドデザイン」を提唱し、沖縄の発展が日本全体の繁栄に寄与できることを多面的なデータにより解き明かした沖縄経済界の牽引(けんいん)者、安里昌利氏の渾身(こんしん)の著書である。

 同氏は、父親譲りの開拓者精神が旺盛で「狭い日本」を飛び出し「広い世界」を観(み)るため、バイトをしながら約1年間にわたり海外で過ごした体験を持つ。

 沖縄銀行に入行以来、約50年も経済活動を支える銀行マンとして、沖縄の成長を見つめてきた。特にオイルショックの頃の不良債権問題への的確な対応は高い評価を受け表彰された。

 本書は6章から構成され、沖縄の成長を起爆剤として日本経済発展の原動力とすることが著者の狙いである。沖縄の経済成長の理由、地理的優位性、展開するための戦略、ビジネスチャンス、独特の文化と観光地の現状、医療、健康、暮らしやすさなどを豊富なデータに基づきひもといている。

 さらに、ウチナーンチュでも知らない沖縄のディープな側面も描き、ビジネスチャンスや旅行で沖縄へ足を運ぶ人への沖縄を楽しむ指南書の側面もある。琉球王国時代の沖縄は、中国と薩摩藩の両方に属し、地理的優位性を生かし貿易立国として繁栄した歴史がある。

 今でも「地の利」は変わらず、東西の物流拠点として、400年前と同じポジションにあり、フロントランナーとして新たな経済発展を手にする可能性が大とする著者の指摘は大いに参考になるだろう。

 著者は、21世紀は「アジアの時代」になると指摘し、沖縄がこれから日本一の経済発展を遂げる実例を多面的なデータで解き明かした。同氏の構想力がどこまで日本経済の元気を取り戻すか、県民一人一人が「千載一遇」のチャンスをどのように生かすか、その力量が今、問われている。

 (大城浩・沖縄大学客員教授、元県教育長)

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 あさと・まさとし 1948年宜野座村生まれ。73年琉球大学法文学部経済学科卒業、沖縄銀行入行。審査第一部長、取締役本店営業部長などを経て、2002年代表取締役頭取。11年同会長。県経営者協会会長を兼任。17年相談役に就任。

 

未来経済都市 沖縄
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安里 昌利
日本経済新聞出版社
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