沖縄のソウルフードをコンビニで―。沖縄ファミリーマート(那覇市、野﨑真人社長)は、「上間弁当天ぷら店」を展開する上間フードアンドライフ(沖縄市、上間喜壽社長)の天ぷらの試験販売を2日から始めている。現在は5店舗での数量限定販売だが、あまりの人気に増産を予定。県内全店舗での販売を目指して準備を進めている。分厚く塩気の効いた衣が人気の上間天ぷらが店頭に並ぶまで、開発に関わった2人の熱い思いがあった。
■大好きな天ぷらをコンビニで
販売のきっかけは、沖縄ファミリーマート商品部デリカ食品課の稲福直哉課長代理(41)だ。沖縄市出身で幼い頃から上間天ぷらが大好きだった稲福さん。「コンビニで上間天ぷらが食べられるようになれば」。そんな思いを抱いていた稲福さんは昨年、地元の共通の知り合いを通じて上間喜壽社長(34)と出会った。2人で話すうちに意気投合。実現に向けて動き出した。
コンビニ展開するに当たり、新たな調理法に挑戦した。これまでは店舗で衣をつけて揚げて販売していたが、それをファミリーマート各店に配達すると、時間がたち、アツアツの天ぷらではなくなってしまう。この課題を解決するために、一度店舗で揚げたものを凍結してコンビニに卸し、コンビニの店舗で再度揚げる「プリフライ」という調理法を採用した。
時間がたってもおいしく食べられるよう味付けにもこだわった。魚、いかそれぞれで3種類を作り、3回試作した。稲福さんが「十分おいしい」と思った出来でも上間社長が「これは上間の味じゃない」と厳しく判定。構想から半年以上かけ出来上がった商品は「本当に上間天ぷらになった」(稲福さん)。上間社長は「揚げ物を冷凍させておいしいのか?と半信半疑だったが何度か試すうちにうちの天ぷらの味と言えるレベルになった」と胸を張る。
実は値段は98円で、上間弁当天ぷら店よりも高い。その理由は急速冷凍や店舗からコンビニに卸す運搬代なども含めて「コストはかなりかかっている」からだという。稲福さんは「工場での大量生産ではなく手作りの手間と味を落とさないことを大事にした」と話す。
■コンビニは現在のまちぐゎー
上間天ぷらのルーツは上間社長の祖父が日本復帰前に開いた刺し身屋。余った刺し身を天ぷらにして街の商店に卸販売したことから天ぷら屋につながった。「天ぷらが時代を超え、現代のまちゃーぐゎー(商店)のコンビニで販売されることは感慨深い。時代は変わっても変わらない部分がある」と語る。
「地元のつながりがあって実現出来たこと」と稲福さん。「欲しいものがすぐに手に入るのがコンビニ。今後、販売店舗を増やして上間天ぷらを食べたい人が気軽に食べに行けるようになれば」と期待を込める。
現在、上間弁当天ぷら店の客はほとんどが沖縄県民。観光客が多く訪れるコンビニでの販売は新たなファン獲得にもつながる。「沖縄天ぷらの認知度が上がってくれると嬉しい」と期待する。「今後は順次取り扱い店舗を増やし、品質も改善していく。コツコツおごらずやっていきたい」と話した。
上間天ぷらを試験販売しているのは、浦添高校前店、港川小学校前店、レグザリウボウ店、糸満阿波根店、読谷長浜店の5店舗。魚といかの2種類をレジ横のケースで販売している。
(玉城江梨子、田吹遥子)