映像の中にいたのは若き日の父だった 寝たきりの父、今の沖縄をどう思うのか 


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紙面を通じてつながった父やその後のつながりについて語る金城秋子さん(左)と夫の亮さん=5日、読谷村座喜味

 新聞を通じて若き日の父に出会った―。読谷村の金城秋子さん(38)は琉球新報のコラム「南風」で紹介されていた映画「米軍が最も恐れた男~その名は、カメジロー~」を見に行くとはっとした。映画の主人公、瀬長亀次郎氏を取材している記者を見ると、琉球放送に勤めていた父の姿があった。

 南風を執筆していたのは沖縄市の映画館「シアタードーナツ」の宮島真一代表。コラムを読んで内容が気になった金城さんは夫の亮さん(38)と一緒に映画館に見に行った。それまで瀬長氏については名前くらいしか知らなかったが、理不尽な基地負担にはっきり「ノー」と言える政治家の存在に衝撃を受けた。

 その「カメジロー」にインタビューしていたのが父の徳田安則さん(77)=那覇市=だった。徳田さんはテレビに出ることもあったが、幼かった金城さんは父の映像を見たことはほとんどなかった。映画を見て、米軍占領下で奮闘するカメジローに徳田さんの姿を重ね「父も真実を追っていたのでは」と思いをはせる。

 金城さんが父の軌跡に特別な感情を抱くのは、当時の話を直接聞くことが難しくなったからだ。パーキンソン病を患い、4年ほど寝たきり状態だという。

 若い頃の父と出会い、心を揺さぶられた金城さん。いまだに普天間飛行場は返還されず、辺野古の新基地建設工事が進む。この現状を父はどう思うか。映画を通して考えた「今の沖縄」の姿。思いのたけをソーシャルメディアに書き込み、琉球新報にも投稿した。

 すると、読んだ人から「私も映画を見てみたい」などの反響が広がった。「今の時代は何も考えなくても生活できる。だからこそ何が真実か自分でも追い求めたい」と心に決めた。 (仲村良太)