沖縄県の米軍普天間飛行場周辺住民3415人が実質的な米軍機の飛行差し止めや過去、将来分の損害賠償などを求めた第2次普天間爆音訴訟の控訴審判決が16日、福岡高裁那覇支部であった。大久保正道裁判長は一審に引き続き、騒音の違法性は認定したものの飛行の差し止め請求は棄却した。その上で、賠償の基準額は一審判決を変更し、30%以上減額。過去分の約21億2千万円の支払いを命じた。日米両政府の「普天間基地提供協定」の違憲確認については退けた。
原告らは判決後、那覇市内で記者会見した。島田善次原告団長は「全国の爆音訴訟で地道に築き上げた被害認定の水準を著しく後退させるもので、到底容認できない」と判決を批判。弁護団は上告する方針を明らかにした。
控訴審判決で大久保裁判長は一審と同様に、米軍機の騒音により住民らが生活妨害や精神的苦痛、睡眠妨害を受けていると認定した。
ただ、一審が認めた高血圧症発症のリスク増大という健康被害については「騒音のみが原因となっているとは認めがたい」と指摘した。その上で、うるささ指数(W値)75以上の原告は月額7千円、80以上は同1万3千円とした一審の賠償の基準額を、それぞれ4500円、9千円に減額した。
将来生じる被害の賠償は認めなかった。低周波音やオスプレイ配備による被害の増大という原告側の主張についても「認めるに足りる証拠はない」と退けた。
飛行場周辺の騒音コンター(分布図)区域外の住民の被害は「W値75以上の騒音と比べて小さいと言わざるを得ない」と判断し、賠償請求を認めなかった。
米軍機の飛行差し止めについては、これまでの基地騒音訴訟と同様に「国は米軍航空機の運航を規制し、制限する立場にない」という「第三者行為論」を採用し、請求を棄却した。
基地提供協定が、憲法が保障する裁判を受ける権利を侵害しているという訴えに関しても、裁判所の審理の対象外として却下した。
2016年11月の一審那覇地裁沖縄支部判決は、原告3395人に対し、国が約24億5800万円を賠償するよう命じた一方で、そのほかの請求は退けた。住民側と国の双方が控訴していた。