「後退判決」に原告怒り、落胆 第2次普天間爆音訴訟控訴審 「植民地の裁判だ」


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第2次普天間爆音訴訟の判決後「金で爆音は消せない」など書かれた垂れ幕を掲げる弁護士ら=16日午後2時すぎ、那覇市楚辺(ジャン松元撮影)

 「棄却」「却下」。第2次普天間爆音訴訟控訴審で大久保正道裁判長が読み上げる判決文を傍聴席で聞いていた原告らはこみ上げる怒りを抑え、沈黙を貫いた。損害賠償額や被害認定は一審だけでなく、第1次訴訟からも後退した。法廷を出た島田善次原告団長は「永遠に被害を甘受せよというに等しい判決で到底是認できない。ただ机の上で書いたような判決だ。許せない。主権国家でなく、植民地の裁判だ」とぶちまけた。

 沖縄県の米軍普天間飛行場周辺住民約3400人が米軍機の飛行差し止めや損害賠償を求めた同訴訟。判決後の集会には原告や全国の爆音訴訟団の関係者ら約100人が集まり、結果が伝えられると「忖度(そんたく)判決だ」「司法はないのと一緒」と反発の声が相次いだ。

 宜野湾市普天間に住んで50年近くになる無職、横田チヨ子さん(91)は「くやしくて、怒りの持って行き場がない。この1週間は特に爆音がひどかった。被害はひどくなる一方だ。住民の被害を軽減させるための司法判断ができない司法は何のための司法なのか」と唇をかんだ。

 普天間飛行場を巡っては、沖縄防衛局の目視調査で2018年度の1年間に航空機が離着陸した回数は17年度比20.3%増加した。市に寄せられた苦情は684件で過去最多、市民の負担感が増えたのは数字上も明白だ。それにもかかわらず理由も示されずに賠償は減額された。

 普天間出身で現在は同市新城在住の無職、比嘉博さん(67)は「なぜ差し止め請求が棄却され、なぜ賠償額が減額されたのか。もう少し丁寧な説明がほしかった。不可解で不明瞭な判決だ」とため息をついた。

 原告は今後、上告する予定だ。 島田団長は「これはもっと闘えということだ。一致団結して飛行差し止めできるまで頑張ろう」と拳を握った。

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 【宜野湾】原告の飛行差し止め請求を退け、住民の健康被害を十分に顧みず、賠償の基準額を減額した第2次普天間爆音訴訟の控訴審判決に対し、米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市の住民からは「他人事のような感じだ」「どうあがいても国には勝てないのか」という憤りの声が上がった。

 普天間飛行場ではこの日、朝からCH53大型輸送ヘリコプターのプロペラ音が周辺に響き渡った。判決が言い渡された午後2時前後にはAH1ヘリやUH1ヘリが市上空を旋回した。

 宮城清儀さん(65)=市大山=は「本当は基地がないほうがいい。県民投票の結果を受けても、国は何もしてくれない」と不満を訴える。市宇地泊に住む65歳の女性は「健康被害は絶対にある。特に小さな子どもの場合はあるはずだ」と強調、判決内容に疑問を呈した。