地価500倍も 伊良部大橋開通でホテル急増 宮古島バブル(1) 〈熱島・沖縄経済〉1


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伊良部島の海岸沿いを埋め尽くすように進むホテル建設=2018年12月

 2018年12月。沖縄観光は冬場の閑散期に突入したが、宮古島の空の玄関口、宮古空港は航空機の出発を待つ人々でごった返していた。観光地としては石垣島に水をあけられていた宮古島だが、全長3・54キロに及ぶ伊良部大橋が開通した15年1月以降、状況は一変した。観光客は急増し、ホテル建設ラッシュにより土地価格は高騰。一部で坪単価が500倍になった土地もあるという。空前の好景気に人々は「宮古島バブル」だと口をそろえる。

 宮古空港に降り立った観光客の多くを引きつけているのは、無料通行の橋では国内最長の伊良部大橋だ。冬場にもかかわらず、多くの観光客がエメラルドグリーンの海に浮かぶ橋をバックにSNS映えする写真を撮影したり、ドライブを楽しんだりしていた。

 伊良部島は架橋前までホテルは1軒しかなかった。だが、今は宮古島から橋を渡り、左折した県道沿いには低層のヴィラタイプのラグジュアリーホテルが立ち並ぶ。18年12月には森トラスト・ホテルズ&リゾーツ(東京)とマリオット・インターナショナル(米メリーランド州)が「イラフSUIラグジュアリーコレクションホテル 沖縄宮古」を開業するなど、周囲ではホテル建設が相次ぎ、橋を臨む海岸沿いを埋め尽くす勢いだ。

 この海岸沿いでホテルの建設ラッシュが進むのは道行く先にある下地島空港の旅客ターミナルのオープンも深く関わっている。市民の足として利用されている宮古空港とのすみ分けで、観光客を主なターゲットとしている下地島空港はターミナル施設も開放的なヴィラタイプだ。また、空港北端の通称「17エンド」は真っ白な砂浜の絶景ビーチとして有名で、空港自体がリゾートを演出している。

 下地島空港旅客ターミナル施設を運営する下地島エアポートマネジメントは乗降客数を19年に11万人、25年に57万人と予測している。乗り降りを合わせた数字のため実際はこの半分になるが、多くは観光客と見込まれ、その分の需要があると見越している。

 宮古島市の入域観光客数は14年度の43万人から架橋後の15年度は51万人に増加、17年度は2・3倍の98万人に達した。18年度は110万~120万人に達する勢いで、3倍になる計算だ。しかし、ホテルは圧倒的に足りない。県による17年末現在の宿泊施設実態調査で宮古島市内のホテル・旅館は46軒2432室にとどまり、収容人数は5868人しかない。宿泊施設は需要超過の状態が続くとみられる。

 この旺盛な観光需要がホテル建設を生み出し、架橋前後で伊良部島や宮古島市街地では土地の価格は2~10倍、伊良部の一部ホテル用地では架橋前には坪2千円ほどだった土地が500倍の坪100万円で取引されたと言われている。市内の不動産業者は「沖縄(本島)や本土の会社が買っている。島の人には手が出せない価格だ」と戸惑った様子で語った。
(「熱島・沖縄経済」取材班・仲村良太)
(琉球新報 2019年1月10日掲載)


 

宮古に2ホテル新設

日建ハウジング 伊良部と宮古空港近く
 

伊良部島ホテル(仮称)イメージ
宮古島エアポートホテル(仮称)イメージ

 不動産業の日建ハウジング(那覇市、眞保榮薫代表取締役会長)が宮古島市内で新たに2ホテル、計約400室を開発することが10日分かった。伊良部大橋のたもとにラグジュアリーホテル「伊良部島ホテル」(仮称)、宮古空港近くにシティホテル「宮古島エアポートホテル」(仮称)を建設する。観光客のさらなる増加などを見込み、両ホテルとも当初計画より規模を拡大して開発する予定という。

 伊良部島ホテルは敷地面積2万1355平方メートルに地上3階、地下1階の鉄筋コンクリート造で132室の施設をしている。入域観光客の増加を予想し2020年中の着工を目指す。新井正樹社長は「伊良部大橋を降りてすぐの場所なのでランドマーク的なホテルにしたい」としている。

 エアポートホテルは同市平良下里の宮古空港近接地に地上5階の宿泊棟、レストランやバー、露天風呂などを予定する地上3階の共用棟からなる約200室の施設を計画、今年8月ごろの着工を予定している。

 いずれも運営はホテル運営会社が担う。

 同社はホテル運営の沖縄UDSと宮古島市内で既に2ホテルを共同開発している。また、自社グループが伊良部島などで運営するヴィラタイプのラグジュアリーホテル「フェリスヴィラスイート」を現在、県内で約20棟営業しており、今後は100棟まで増やす計画で開発を進めている。

(仲村良太)

(琉球新報 2019年1月11日掲載)