「ここまで激戦地とは思わなかった」。台湾の嘉新水泥(嘉新セメント)が進めるホテルコレクティブ那覇の秋山平総支配人は従業員確保の難しさをこう吐露した。
同ホテルは那覇市松尾の国際通り沿いに10月に完成予定で、11~12月の開業を予定しているが「特に若年層が少ない」と指摘する。
入域観光客数の増加に伴い、県内各地でホテル建設が活発だ。2020年3月には那覇空港第2滑走路の供用開始を控えるなどさらなる拡大も見据え、とどまるところを知らない。訪れる観光客が増えることによりニーズも多様化、形態も多岐にわたる。人手不足の中、ホテル間の争奪戦も激化。群雄割拠の様相を呈している。
県内では19、20年に開業が計画されているホテルが44あり、客室数は合計7350室。これにより、県内の宿泊施設の客室数は5万室を初めて超える見込み。19年は特に恩納村名嘉真のハレクラニ沖縄(360室)、那覇市松尾のホテルコレクティブ那覇(260室)、宮古島市上野のシギラリゾート内3ホテル(計310室)など大型リゾートホテルのオープンが目白押しだ。
各ホテルは働きがいやよりよい待遇を提示するなど、よりよい人材確保に力を注いでいる。ただ、あらゆる業種で人手不足が深刻化する県内で、ホテルでは新規の働き手供給が需要に追いついていないのが現状だ。
この状況に拍車を掛けているのが県内スーパー最大手のサンエーとパルコが協業して開発する大型商業施設「サンエー浦添西海パルコシティ」の存在だ。県内初出店の約80店舗を含む約250店舗が入居し今夏オープン予定。名護市にあるホテル関係者は「新しいものが好きな若者が取られている」と嘆いた。
一方、ホテル業界は従来からヘッドハンティングやキャリアアップを目的にした人材の流動性が高い。その中で新規ブランドとして存在感を発揮しているのがハレクラニ沖縄だ。
ハレクラニはハワイの老舗ホテルとして1917年に創業、100年を超える歴史を誇る。81年に三井不動産が買収し、世界中で「2号店を目指していた中で満を持しての沖縄進出」(吉江潤総支配人)だ。吉江氏は同時に「ホテルを憧れの職場にしたい」と働きがいや魅力、ゲストに対する使命と行動基盤なども示し、働き手を引きつけている。
観光客が1千万人に迫り、量も質も求められる新たなステージに突入する沖縄観光。ホテル建設ラッシュに伴う雇用創出、人材流動化が沖縄観光、経済に好循環を生むか期待が掛かる。
(「熱島・沖縄経済」取材班・仲村良太)
(琉球新報 2019年1月22日掲載)