屋良氏当選で基地問題はどうなる? 頼みの綱は民意 選挙のたびに問い続け 衆院3区補選の舞台裏(下)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
報道陣の質問に答える玉城デニー知事(手前)と屋良朝博氏=21日、沖縄市

 「政治の責任だ」。衆院3区補選で当選した屋良朝博氏(56)は度々この言葉を用いながら名護市辺野古の新基地建設を強行する政府を批判し、沖縄の基地問題を政治の責任で解決する必要性を強調した。

 23日の会見でこの点に関して政治の役割とは何かを問われた岩屋毅防衛相は、「南西地域の抑止力を低下させるわけにはいかない。したがって
自衛隊の部隊を順次配備しているが、米海兵隊の機能も必要だと考えている。これもまた政治の責任だ」と語った。在沖海兵隊の抑止力を疑問視してきた屋良氏をけん制しつつ「普天間飛行場の返還についても責任を持って成し遂げていく」と付け加えた。

 県民投票や補選で辺野古移設に反対の民意が示され続けているが、政府がこれに応じて工事をストップする気配は全くない。25日には本部港からも埋め立て土砂を搬出し、作業を加速させる方針だ。

 玉城県政は埋め立て反対が7割を超えた2月の県民投票の結果を生かしつつ、辺野古新基地建設を民主主義の問題として全国に訴えることを重視する。自身の後継でもある屋良氏の当選を、県外世論に働き掛ける追い風としたい考えだ。

 21日夜、屋良氏が当選確実となったのを事務所で見届けた玉城デニー知事は「辺野古(移設)は必要ないと明確に訴えたことが評価された。唯一の解決策ではないことを国会で追及してもらえれば、多くの皆さんが気付くきっかけにもなる」と言葉に力を込めた。

 3月までの衆参の予算委員会で野党は県民投票の結果を顧みない政府の対応や、軟弱地盤の問題、膨らみ続ける工費や工期などを取り上げ、政府側にとっての“不都合な事実”を追及する姿勢を強めた。選挙戦で「私は普天間の問題を熟知している」と自ら強調した屋良氏が今後加わり、論戦が広がりを見せるか注目される。

 辺野古問題を巡る県と政府の対立は、今後法廷闘争に入る見通しだ。一方、政府は軟弱地盤の改良工事に必要な計画変更を県に申請する準備を進めている。

 シングルイシューで辺野古移設が問われた県民投票や3区補選で移設に反対する強固な民意が示されたものの、民意を頼みの綱とする玉城知事にとっては今後も重要選挙の度にその民意を問い続けることになる。政府側に付け入る隙を与えないためにも、玉城知事にとって自身が推す候補は落とせない。その民意は夏の参院選で再び問われる。
 (衆院補選取材班)