入域観光客数がハワイに迫り、1千万人が目の前となっている県内には国内外の有名ホテルブランドが集積している。特に西海岸のリゾートエリアには世界ブランドや県内資本のホテルが密集、今年7月にはハワイの老舗ホテル「ハレクラニ」が初の2号店を開業するなど、沖縄のブランド力はますます高まりそうだ。一方、世界ブランドが苦戦を強いられる事態も噴出し、背景には沖縄の特殊事情が見え隠れしている。
「出鼻をくじかれた。ビジネス的には苦しい、大変なスタートだった」。ハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄の野口弘子総支配人は厳しい表情で2018年を振り返った。
同ホテルは18年8月に全面開業した。当時、相次ぐ台風で入域観光客は伸び悩み、さらには9月の台風24号でフィットネスジムのガラスが破損、子ども向けの体験教室やオフィスの一部が水没、ラグーンプールの一部も崩壊した。
この間、キャンセルや予約控えが相次いだ。年末も差し迫った12月21日にようやく全面復旧。ハイアットのブランド力や高いデザイン性など個性を生かし年末年始は満室近くに回復した。野口氏は「少ないお客さまだったが、きちんとしたオペレーションができた。新しいマーケットを創出するという原点に戻りたい」とリスタートを誓った。
リゾートホテルの苦境はデータ上も表れていた。りゅうぎん総合研究所によると18年のリゾートホテルの売上高は前年を下回る月が多かった。いち早く持ち直した那覇市内のホテルとは裏腹の状況だ。
世界ブランドとして知られるザ・リッツ・カールトン沖縄も18年は同様に苦戦を強いられた1年だったという。さらに今年もハレクラニのオープンに気をもむ。ただ、座して待つことはなく一部改装を予定、客室数の増室も計画しているという。佐々木孝司総支配人は「ブランド維持もあるが、マーケット対策もある」と攻めに打って出る構えだ。
背景には客室単価の低さもあるという。ラグジュアリーホテルとして高品質のサービスを提供しながらも、競争から価格を下げざるを得ない状況もある中で、単価上昇につなげたい考えだ。
県内では賃金が低い中、客室が安価で供給されがちで、宿泊客も「価格ありきで選んでいる」(ホテル関係者)と悪循環の様相も呈している。課題となっている観光収入増加のためにも、負のスパイラルから抜け出せるかも注視される。
(「熱島・沖縄経済」取材班・仲村良太)
(琉球新報 2019年1月23日掲載)