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個性的な宿増える 多様な観光客の受け皿に 拡大、多様化するホテル(5) 〈熱島・沖縄経済〉9


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 インターネットの旅行サイトで航空券や宿泊施設の予約・決済が簡単にできるようになり、旅行者の選択肢は大きく増えた。宿泊施設も至れり尽くせりのフルサービスのホテルだけでなく、小規模ながら特色のある施設が増え、多様な観光客の受け皿となっている。

沖縄の古民家を生かした「YUMBARU HOTELS 根路銘01号室」を紹介する久保勇人さん=大宜味村根路銘

 世界自然遺産登録を目指す本島北部のやんばる地域。大規模な宿泊施設のない大宜味村根路銘にある「YUMBARU HOTELS 根路銘01号室」はやんばるの森に抱かれた、築100年近い古民家を活用した宿泊施設だ。運営する「Quantum Leaps Complex Office」(QLCO)が昨年開業。同社の久保勇人代表が地域の暮らしや伝統文化を味わってもらおうと、仏壇や額縁、家族写真をそのまま活用している。

 民家をありのまま生かしているのは、家主が今も変わらず所有していることも理由の一つ。QLCOは家主から賃貸して旅館営業しており、大宜味から離れて暮らす家主が旧盆などには利用できる契約をしている。清掃や管理も行き届き、家主のメリットもある。

 一棟貸しのため、宿泊料金は高めに設定しているが、ブッキング・ドットコムなどを通して韓国、香港、豪州、インド、アメリカ、フランス、カナダなど世界各地から訪れる。ホテルのフロントは国頭村辺土名にあるため、周辺10キロで同様の施設を増やす計画だ。難点は土地勘のない外国人客が訪問するのに苦労することだという。久保代表は「沖縄は仏壇があると簡単に家を手放せない事情にも配慮し、地域の資源を残す活動にもつなげたい」と語った。

 「バブル」と言われる宮古島市でも観光客の増加に比例するように小規模の宿泊施設が増えている。ネクストディスカバリー(山本豪代表取締役)運営の「癒しの宿UmiOto Guesthouse Resort」は2015年4月に開業したばかりだが、旅行新聞新社が主催する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で選考審査委員特別賞「日本の小宿」10施設に県内で初めて選ばれた。

 UmiOtoの客室は異なる雰囲気の壁紙が張られた6室。個人旅行で訪れる人がほとんどだ。山本代表は「大手には勝てない点もあるが、一人一人のニーズに合わせた接客は負けない」と強調、小規模の利点を前面に生かしている。

 旅行サイトの利用者が増える中、県はエクスペディア・グループ、沖縄観光コンベンションビューローはトリップアドバイザーと協力関係を結んだ。団体旅行で大規模ホテルが不可欠な一方、オリジナルの個人旅行の需要も拡大するとみられ、個性的な小規模宿泊施設も増え続けそうだ。

(「熱島・沖縄経済」取材班・仲村良太)

(琉球新報 2019年2月5日掲載)