沖縄県内で主要ホテルの稼働率が2年連続で高水準の80%を超える中、外資によるホテルへの投資が積極的に行われている。これまでは欧米系の不動産ファンドなどによる所有や世界ブランドの運営会社に注目が集まっていたが、東アジアからの観光客が増え続ける中、同地域からの新規参入も進展。沖縄観光に外資の熱い視線が送られている。
2018年1月、那覇市首里の象徴的なホテルだった沖縄都ホテルの営業が終了した。沖縄の日本復帰2年後の1974年に開業した老舗で、直近は近鉄・都ホテルズが運営していた。
同ホテルは“国内資本”から“外資”へと移る。米投資会社モルガン・スタンレーが運営する不動産ファンドの所有となり昨年9月、フランスに拠点を置くアコーホテルズが運営するホテルブランド「ノボテル沖縄那覇」として本格開業した。
外資系の進出は今に始まったことではない。米ホテル大手のヒルトン・ワールドワイドなどの世界ブランドやシェラトン沖縄サンマリーナリゾートなどが挙げられる。かつて外資の参入は「黒船」などと警戒され、売買の道具として利用したり、従業員を解雇したりと負のイメージが強かったが、今はそれも変化している。
ノボテル沖縄那覇の坂本公敏総支配人は「モルガン・スタンレーも売却するのは確実だろう。ただ、新たに設備投資されてホテルも新しくなる。ホテルの価値を上げることになる」と語る。沖縄都ホテルで働いていた従業員の多くがノボテル沖縄那覇の運営会社に雇用されている。宿泊客もノボテルブランドだから選んだという人もいるといい、外資の参入で沖縄観光の価値は高まった格好だ。
一方、来沖者が増える東アジアからの新規参入も活発だ。2018年に沖縄を訪れた外国人観光客は290万3800人で過去最高を更新した。市場別にみると、台湾が13・0%増の88万9700人、韓国が6・2%増の55万5500人、中国が25・5%増の63万2400人、香港が5・6%減の24万2400人で、この4地域でシェアの大部分を占める。
そこに着目したのが同地域の資本だ。台湾の嘉新水泥(嘉新セメント)は那覇市松尾でホテルコレクティブ那覇を今年末に開業を予定する。香港の大手旅行会社、東瀛遊旅行社(EGLツアーズ)も同市牧志にホテル用地を取得しており、建設を予定している。同社関係者は「地域のお客さまの利用を見込んでいる。投資や転売目的とは異なる」と指摘し、増加する“地元客”の受け皿を担う考えだ。
外資の参入は投資や運営など多様化しているが、沖縄観光の魅力、潜在力への期待という点は共通している。
(「熱島・沖縄経済」取材班・仲村良太)
(琉球新報 2019年2月13日掲載)