社会問題は「自分ごと」 沖縄でフェミニズムを考える「おきふぇみ」が結成1年 暴力のない、平和で平等な社会へ自由に熱く


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
1周年を迎えた「おきふぇみ」のメンバーら=4月15日、那覇市内

 ジェンダーやフェミニズムの視点から日常の諸問題を考えようと活動する団体「おきふぇみ」が3月、1周年を迎えた。参加するのは、それぞれ子どもや女性、人権に関わる仕事や活動を続ける沖縄県内の女性たち10人。「できる人ができることを」とペースこそ無理なく進めるが、集まればそれぞれの思いが詰まった言葉が飛び交い、インパクトのある講演会や写真展を開催してきた。

 会の芽生えは2015年。自宅に帰れず夜の町で過ごす少女たちを支援する仁藤夢乃さんの活動を知ったメンバーの1人が「夜の町に出ざるを得ない子は沖縄にもいるが、支援活動は沖縄にない。ぜひ話を聞きたい」と身近な仲間に声を掛けたのがきっかけ。さんぽの会(おきなわ「非行」と向き合う親たちの会)、「いのちの根っこを育てる会」など5団体が実行委員会を結成し、5月に仁藤さんを招いて講演会を開いた。

 関心は高く、入場券は想定以上の売れ行きで会場はほぼ満員に。「一つの団体の活動には限界があるが、みんながつながれば何でもできると実感した」と実行委員の井形陽子さん(さんぽの会)。

 その次は17年3月、しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄の秋吉晴子さんが呼び掛けて実行委員会をつくり、ジェンダーの観点から発言を続ける北原みのりさんを招いた講演会を開いた。「性と国家」をテーマに、ジャーナリスト山城紀子さんとの対談に約150人が聞き入った。

 ほぼ同じメンバーらは同年8月、仁藤さんが支援する少女たちが写真と文章で生の声を伝える「私たちは『買われた』展」を宜野湾市で開いた。反響は大きく入場券は早々に完売。2日間で約800人の来場者は、全国を巡回している同展の最多記録だという。予想外の売れ行きで生まれた余剰金は、仁藤さんが代表を務める団体に寄付したほか、仁藤さんの著書100冊を購入して県内の全県立高校や児童養護施設に贈った。

 活動が広がるにつれてお金を管理するための口座が必要になり、助成金申請のためにも団体化しようと18年3月、「おきふぇみ」を結成した。「沖縄でフェミニズムを考える」との意味だが、メンバーらは「フェミニズムの定義は人それぞれ」と込める意味は幅広く「きっちり決めない方が広がりが出る」とおおらかに笑い合う。

 会則には「暴力のない、平和で平等な社会の実現」を掲げた。

 代表の上野さやかさんは「メンバーは人権を共通項に、社会の問題を自分ごととして捉える人たち。何かあったときにはすぐに団結できる」と話す。ことし4月の集まりでは、セクハラ問題から女性のついのすみかまで、にぎやかな会話と笑い声が途切れず「持ち回りでそれぞれの活動内容を紹介する勉強会をしよう」といった声も出た。個別の団体の活動内容を超えて手を取り合い、しなやかにパワフルに活動を続ける。
 (黒田華)