かつて男女とも平均寿命日本一で、「長寿県」として広く知られた沖縄。伝統的な食文化や温暖な気候、おおらかな県民性が全国的にも注目を集め、1995年には「世界長寿地域宣言」を行った。だが、平成の間に男女とも大きく順位を下げることとなる。
厚生労働省が5年に一度調査している「都道府県別生命表」。1975年の統計以来、沖縄の女性はトップを維持し、男性も80年、85年に1位になるなど上位にランクインしていた。
2002年12月、00年の沖縄の平均寿命は女性1位、男性26位と発表された。その前の調査では男性は4位。大きな後退に衝撃が走り、長寿の危機が強く意識されるようになった。
その後も平均寿命の伸びの鈍化は続き、13年に発表された10年調査は女性が初めて首位から陥落し、3位に。男性は25位から30位に後退した。最新の15年調査では女性7位、男性36位と下降が止まらない。県は「2040年までに男女とも平均寿命日本一」を目指して県民に生活習慣の改善と健康づくりを促すものの、即効性のある方策はなく、道のりは険しい。
那覇市医師会・崎原永辰さん 生活習慣が病気予防
健康診断における県民の特徴的な傾向として、若年層を中心とした男性の肥満を原因とする生活習慣病(高血圧、脂質異常、肝機能障害など)が挙げられる。県が世界長寿地域宣言をした1995年からこの傾向はあった。全国とは異なり、沖縄では20~30代から男性の肥満率が急激に上昇する。肥満率は長年にわたって男女共に全国ワーストだ。食の欧米化、車社会の定着、飲酒に寛容な風土などが要因と考えられる。
生活習慣病対策もがん対策も、生活習慣の改善で6割以上を予防できるはずである。病気になる前が大切で、若いうちから意識を変える必要がある。従来の個別の保健指導だけでなく、問題点を県民で正しく共有し、リスクを減らす努力をすべきだろう。個人への働き掛けだけでは長寿奪還は難しい。公共交通機関の充実、歩きやすいまちづくりなど、社会構造を変えるぐらいの改革が求められる。